国際結婚の離婚トラブルと手続きの進め方

日本に定住する外国人の増加、外国に渡航する日本人の増加にともない国際結婚を選択する人は多くいます。その国際結婚の件数に比例して増加しているのが国際離婚です。

国際離婚は、日本人同士の離婚と違って、特殊なトラブルが多く手続きも複雑なため、どのように解決すればいいか悩んでいる人は少なくありません。

この記事では国際結婚のよくある「離婚原因」「離婚手続きの進め方」について解説します。

国際結婚の離婚動向

厚生労働省の発表によると、平成17年の国際離婚の件数は約1万5000件、平成27年は約1万3000件でした。平成18年の国際結婚が約4万4000組で平成27年の国際結婚の件数が2万1千組ですので、約半数近くのカップルが離婚していることが分かります。

日本人同士の夫婦の離婚率は約3組に1組ですので、国際結婚の離婚率がいかに高いかが分かります。

国際結婚のよくある離婚トラブル

国際離婚の原因は、日本人同士の離婚と同じように不倫、暴力、お金に関するトラブルとともに、文化の違いや言葉の壁でトラブルになるケースがあります。

国際離婚のよくある原因で多いのは以下のようなものです。

浮気(不倫)

離婚原因が浮気というのは国際離婚では少なくありません。浮気で多いのが外国人の夫が別な日本人女性と関係を持つケースです。外国人男性に対して興味を持つ日本人女性は一定数います。そんな女性との出会いにより不倫関係に発展することはよくあります。

また慣れない日本の生活への不満やストレス、性格の不一致などから同胞の相手との浮気に走る外国人の夫や妻がいます。

そのため、浮気相手と一緒になりたいという理由により夫から突然離婚を切り出されたという例もあります。中には夫が離婚原因を作ったにも関わらず、慰謝料を払いたくないために強引に協議離婚させられそうになってトラブルとなるケースもあります。

外国人の中には「慰謝料なんて払う必要がない」と考える人は少なくありません。例えば、ドイツやフランスでは不倫慰謝料というものがありません。

相手の浮気により精神的なダメージを受けたなら、ここは日本ですので、慰謝料に対する考え方を説明して支払ってもらう必要があります。浮気が離婚原因なら弁護士に相談してしっかり慰謝料は請求すべきでしょう。

重婚

重婚とは配偶者を持つ人が他の人と重ねて結婚することです。日本では、一夫一婦制のため、この重婚をおこなうと「重婚罪」という2年以下の懲役という刑法が適用されることがあります。

日本人同士の結婚では、重婚は犯罪であり、また戸籍謄本がチェックされるため重婚が起こるケースはごくまれです。しかし、外国の中には戸籍制度が管理されていない国も少なくないため、重婚のトラブルは国際結婚でしばしば見られます。

また、国によっては一夫多妻制を認めていたり「婚姻要件具備証明書」という届け出書の記述があいまいであったりするため、外国人の相手が重婚していたというケースが起こりえます。

日本の永住権を得るのが目的

外国人は日本人と結婚することで、日本に永住するために必要な「配偶者ビザ」を取得できます。自国に経済力が無い外国人の中には、この「永住権」を得るのが目的で日本人と結婚しようと考える人がいます。結婚の目的がそのような理由ならば当然ながら結婚生活はうまくいきません。

日本人が離婚したいと思っても、離婚をすると配偶者ビザは無効になります。相手は、配偶者ビザが無効になることを嫌がり離婚に応じないというトラブルもよくあります。

浪費や借金などお金のトラブル

相手が「正当な理由もなく働かない」「ギャンブル」「浪費癖」などの借金が原因で国際離婚に至るケースがあります。外国人の夫が働かない、生活費を入れないために生活が困窮した場合には、日本の法律では離婚が認められます。ギャンブル、浪費、借金も同じように離婚理由になります。

注意したいのが、相手が作った借金の返済引き継ぎの問題です。保証人になっている場合は別として、離婚時には配偶者の借金を引き継ぐ必要は原則としてありません。

相手が借金の引き継ぎを要求してきても断固として拒否すべできでしょう。また、相手に借金があると慰謝料、養育費、財産分与などにも影響しますので、事前に弁護士に相談して、対策を講じるべきでしょう。

暴力(DV)

外国人の夫からの暴力に悩む妻はとても多いです。日本人女性は耐える人が多いことから、長期間にわたって相手に暴力で支配されてDV被害を受け続けるケースは少なくありません。

最近では逆の例も多く見られ、外国人妻から「大声で罵られる」「暴力を振るわれる」「差別発言を受ける」といった被害を受ける日本人夫もいます。

DVによる離婚は「証拠」が重要です。殴られた跡の写真、DV現場の音声、医師の診断書など相手から暴力を受けた証拠を集めて調停離婚や裁判離婚を行います。

いずれにしてもDVで有利な解決を図るためには、弁護士に相談して、「相手との示談交渉を進める」「調停対策」をおこなうのが適切な対応方法です。

文化や価値観の違い

国際結婚は、文化や価値観の違いが大きく立ちはだかることがあります。結婚前には発覚しなかった問題が「同居して一緒に生活する」「子供ができる」ことにより、価値観の違いが顕在化することがあります。

例えば「食文化の違い」「掃除・清潔観念」「経済観念」「性生活の違い」「子供の教育方針」などはよくある離婚原因です。このような埋められない溝が広く深くなると離婚につながります。

ある意味、これらの文化や価値観の違いは性格の不一致ということも言えますので、日本の法律においては離婚理由となりえます。

言葉の壁

相手の母国語がよく理解できずに「言葉の壁」を抱えたまま国際結婚するというケースがあります。言葉が通じないと意思疎通ができないためコミュニケーション不足になることがあります。

言葉の壁でトラブルとなるのが、お互いの価値観をぶつけあうようなシーンででてきます。重要な問題を話し合いたいのに「相手に物事が伝わらない」「相手が言うことが理解できない」と大きなストレスを感じます。

言葉の壁により、相手と深いコミュニケーションができないために国際離婚になることはよくあります。

国際離婚するときに起こる問題とは

国際離婚は、日本人同士の離婚とは違って想定できないトラブルが起こることがあります。離婚手続きも複雑になるケースが多く、離婚協議をおこなって離婚届を役所にハイと提出するだけでは終わりません。相手の国の法律に合わせた解決が必要なケースもあります。

また、相手が離婚手続きを完了しないままで、母国に帰ってしまうような事態もあります。国際離婚でよく起こる問題には以下のようなことがあります。

相手の国の法律と離婚手続きの問題

相手の国によっては、日本の法律で成立した離婚を認めないというケースがあります。相手の国や州によって、離婚手続きに必要な条件が異なるためです。

例えば、アメリカ人は日本で離婚手続きができるので、離婚することを大使館に報告しなくても大丈夫です。しかし、アメリカには裁判以外の手続きによる離婚がありません。日本の役所で離婚手続きが認められるかどうかを相手の本籍がある州に確認する必要がでてきます。

フィリピンでは、離婚についての法律がないため、日本で成立した離婚をフィリピンの裁判所に認めてもらうという手続きが必要になります。

このように相手国によって離婚の法律が違うため、離婚の手続きも複雑になりますので、適切に離婚手続きを進めるためには弁護士など専門家のサポートが無いと、うまくいかないことがあります。

親権トラブルや子ども連れ去り

国際離婚では子どもの親権問題が頻ぱんに起こります。離婚の親権争いは日本人同士でもよく起こりますが、外国人の場合には、子どもを「自分の母国で育てたい」「母国の教育を受けさせたい」など、自国に連れ帰りたいという強い欲求によりトラブルになることがあります。

その行動がエスカレートしたのが「子どもの連れ去り」です。日本の法律により日本人の親に親権者が決まったものの、それに納得できない相手が自分の国に子どもを連れ去ってしまうという事件が社会問題化しています。

子ども連れ去り事件を防ぐため、日本は2014年に「ハーグ条約」に加盟しました。ハーグ条約とは、国際離婚が成立した後、子どもを相手の許可なく国外へ連れ去ることを禁ずる法律です。

もし日本で国際離婚が成立し、相手が勝手に子どもを自分の国に連れ去っても、相手の国がハーグ条約に加盟していれば、外務省に申請して子どもを連れ戻せます。

子どもが「連れ去られるかもしれない」「連れ去られた」という場合には、弁護士に相談して適切な解決を目指すべきです。

慰謝料の不払い

暴力や浮気(不貞)が原因で国際離婚をするときに、日本の法律が適用されるならば相手に慰謝料を請求できます。しかし、その慰謝料でよく起こる問題が不払いです。「離婚協議」「離婚調停」などで、慰謝料請求が成立しても、外国人の相手が慰謝料を支払わないケースが少なくありません。

慰謝料の不払いを防ぐためには「一括で支払ってもらう」「支払いが済むまで国外に出ることを禁ずる」などの条件を相手に認めさせる公正証書を作ることにより不払いを回避することが可能です。

しかし、現実的には離婚協議で相手が条件を呑むように交渉するのは難しいのが実情ですので、慰謝料請求は弁護士に相談した上でおこなうのが確実です。

養育費の不払い

日本の法律の範囲内で国際離婚を争うときには養育費の請求もできます。養育費は子どもが成人になるまで支払うお金ですが、外国人の場合には、相手が母国に帰るなどして、支払いが滞る可能性があります。

そのため、養育費の不払いを防ぐためには、慰謝料と同様に協議離婚で取り決めたことを公正証書化するのが有効です。弁護士に相談して離婚協議書を作成しましょう。

配偶者ビザと離婚拒否

外国人の相手が国際離婚後も日本に住む場合は、国際結婚で得た配偶者ビザを定住ビザなど他のビザに切り替えなければなりません。配偶者ビザを失いたくない相手が、離婚を拒む可能性もあるので相手や弁護士と定住について話し合いながら交渉すると良いでしょう。

配偶者ビザを定住ビザに切り替えられる条件は下記の通りです。

【定住ビザの条件】

  1. 国際結婚で子どもができ、親権が外国人の方にあること
  2. 外国人と子どもを含めた家族が安定して生活できる収入と資産があること
  3. 子どもがいない場合は、婚姻期間が3年以上で安定した生活ができる収入と資産があること

定住ビザに切り替えられない場合は、就労ビザなどに切り替える必要があります。

国際離婚するときの手続きの進め方

国際離婚は、日本人同士の離婚手続きとは違っている部分も多いため、以下の点について確認しながら進めます。

日本の法律が適用できるのか確認

国際離婚を争うときに、法律の適用が日本なのか?相手国なのか?をまずは確認します。日本の法律が適用される条件は、夫と妻の国籍や居住地が日本であることです。

【日本の法律が適用される条件】

  1. 夫と妻の国籍がどちらも日本
  2. 夫と妻の居住地が日本
  3. 夫と妻の働く場所や生活基盤の場所が日本

例えば、夫が日本人で日本に住み、妻が外国人で海外に住んでいるケースでは、夫と妻に最も密接な関係のある国の法律が適用されます。

国際離婚を有利に進めるためには日本の言葉や法律で行うことが大切です。国際離婚で分からない問題があれば、まずは弁護士に相談すると良いでしょう。

相手の大使館などで行う離婚の手続き

国際離婚の手続きで最初におこなうべきは、相手の国の大使館や領事館で離婚手続きに必要な条件を確認することです。相手の国によっては日本で成立した離婚を認めない場合があるからです。

離婚手続きの条件を大使館や領事館で確認するときは、同じ国でも州や地域によって手続き方法が違うことがあるので、相手の国だけでなく州や地域についても詳しく確認する必要があります。

日本で必要な離婚の手続き

日本の法律で国際離婚を進める場合には、日本人同士の離婚と同じ手続きを行います。

1.協議離婚

離婚の成立は、夫と妻の話し合いで決まります。子どもがいる場合は、どちらが親権を持つか決めておきます。夫と妻が離婚に合意したら、日本の役所に離婚届を提出したあと、相手の国の大使館などで離婚手続きを行います。

2.調停離婚

国際離婚が協議離婚で合意できなかったときに家庭裁判所に調停離婚を申し立てます。調停離婚は、夫と妻の間に裁判所が入り解決できるように進めます。

裁判所の調停委員が両者の間に入って和解案を提示して解決を目指しますが、この調停離婚では、必ずしも自身が希望する解決にならないことがあります。そのため、弁護士に調停離婚のサポートを依頼するのが確実です。

3.審判離婚

調停離婚で和解が成立しなかったときに裁判官の審判により離婚を成立させます。裁判所の調停委員が夫と妻の主張を聞きながら調査した結果をもとに、裁判官が離婚問題の解決の判断を下します。

審判離婚の判断は、夫と妻の合意がなくても成立します。

4.裁判離婚

審判裁判で離婚が成立しなかったときは、家庭裁判所に裁判離婚の訴えを起こします。裁判所を介しての離婚トラブルはほとんどが調停で解決します。裁判離婚まで発展するケースは俗に言う「ドロ沼」の離婚問題です。

裁判離婚では、親権、高額慰謝料などのケースで多く見られます。

日本の役所で行う離婚手続きの提出書類

国際離婚が成立したら、日本の役所に離婚届と必要な書類を提出します。

【日本人】

  1. 届出をする市町村が本籍地でない場合は戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)を1通
  2. 窓口に来た方の本人確認ができる運転免許所などの顔写真つきの書類

【外国人】

  1. 外国人登録証明書(届出をする市町村外に登録がある場合)
  2. 窓口に来た方の本人確認ができる運転免許所などの顔写真つきの書類

調停離婚・裁判離婚・裁判離婚で必要な書類

  1. 申立人の印鑑
  2. 調停の場合は、調停調書の謄本
  3. 審判の場合は、審判書謄本及び確定証明書
  4. 判決の場合は、判決の謄本及び確定証明書
  5. 和解の場合は、和解調書の謄本
  6. 請求の認諾の場合は、認諾調書の謄本

役所への届出期間は、裁判(調停・審判・判決・和解・請求の認諾)確定の日を含めて10日以内なので注意してください。

国際離婚を弁護士に相談するメリット

国際離婚は手続き・交渉が複雑になるケースが多いため、自力で解決するのが困難になることがあります。そんなときには「法律のプロ」「離婚問題のプロ」である弁護士に相談することで多くのメリットが得られます。

【弁護士に依頼するメリット】

  • 離婚全般のアドバイスをしてくれる
  • 外国人との交渉をスムーズに行ってくれる
  • 子どもの連れ去りを防ぐための対策を講じてくれる
  • 慰謝料などの不払いを防げる
  • 書類収集・作成を任せることができる(大使館)
  • 離婚調停・離婚裁判をサポートしてくれる

国際離婚のトラブルや手続きで困ったら、弁護士に相談することで適切な解決が可能になります。問題が深刻化する前にできるだけ早めに弁護士に相談しましょう。

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