「セックスレス」とは特別な事情もなく、性交渉が1ヶ月以上行われないる状態を指します。
夫婦間において、セックスレスという問題は、離婚の原因となってもおかしなことではありません。元来、夫婦の性交渉とは婚姻関係の基本ともいえる行為と考えられてきたため、セックスレスが離婚の原因となる可能性は十分にあります。
ただし、法律上の離婚原因として認められるか否かは、さらに夫婦ごとの細かい事情を見てみないことにはなんともいえませんし、最終的な判断は裁判所が下すことになります。
協議離婚であれば基本的には自由
協議離婚では、お互いの合意さえあれば、離婚の条件や慰謝料、親権や養育費といったものまで、基本的には自由に決めることができるとされています。
つまり、セックスレスを離婚の条件にすることについて相手が合意をすれば、離婚は成立することになりますし、慰謝料の金額についても、相手が支払うこととその金額に合意さえすれば、特に問題なく成立するといえます。
しかし、協議離婚の場合、離婚協議書を公正証書にでもして残しておかない限りは、相手が実際に支払いをしなければ、慰謝料を請求する強制力は一切ありませんし、離婚にも応じないともなれば、協議離婚を成立させることもできません。
このように、離婚や慰謝料の支払いに応じない相手に対しては、調停や裁判といった裁判所での手続きを利用することになります。
セックスレスの判断は裁判所次第
では、調停や裁判となった場合、裁判所はどういった事情であれば離婚や慰謝料を認めるのでしょうか?
セックスレスが法律上の離婚原因として認められるためには、「婚姻を継続しがたい重大な事由(セックスレスのこと)」が、「夫婦関係を破綻させるまでに至っている」と判断されることが条件となります。
なにをもって継続しがたいと感じるかは、人それぞれといえますが、最終的な判断をするのは個人ではなく裁判所です。セックスレスを主張するのであれば、裁判所が納得するだけの、事情を示す証拠品を掲示する必要があるといえます。
では、どの程度の期間セックスレスが続いていれば、認められることになるのでしょう?
過去の裁判所での判例を見てみると、1回や2回、性交渉を拒んだ程度では、夫婦関係を破綻させるとまでは判断されてはいないようです。
こちらに関しては、具体的な線引きをすることはできませんが、基準としては1年以上、かつ、セックスレスに至るまで特別な事情がまったくない、といったことが条件といえます。
裁判所が認めた慰謝料の相場
セックスレスが上記の条件を満たしている場合、慰謝料が発生する可能性は十分にあります。
慰謝料とは、精神的苦痛に対する賠償金になるため、セックスレスによる精神的苦痛が裁判所に認められれば、相手に対して慰謝料を支払ってもらうことができます。
ただし、慰謝料というものは相手の年収、年齢、婚姻期間など、様々な要素から判断されることになりますし、単なる慰謝料なのか、離婚慰謝料なのか、といった部分からも認定される金額に大きく差が出ることになるため、あまり一概にいえるものではありません。
過去に裁判所が認めたセックスレスに関する慰謝料の相場だけを見てみると、100〜300万円の間が多いようです。
しかし、こちらはあくまでも目安にしかなりませんので、参考程度に頭に入れておくようにしましょう。
過去に高額な慰謝料が認められた条件とは
過去にセックスレスが原因となり、高額な慰謝料が認められた条件は下記のような事情があった場合です。
- 婚姻期間が長く、セックスレスの期間も3年以上ある
- 結婚してから一度もセックスをしていない
- 夫婦間ではセックスレスであるに関わらず、不倫相手とセックスをしていた
- 相手の社会的地位が高く、資産や収入が豊富
このような場合に、高額な慰謝料が認められているようです。
ただ単にセックスレスである、というだけでなく、それに何か付加が加わると高額な慰謝料になることが多いといえます。
セックスレス以外の慰謝料相場や出来るだけ多く請求する方法はこちらで詳しくまとめています。
ケース別でみる離婚慰謝料の相場とできるだけ多くもらう方法
何から手をつけたらいいかわからない場合は専門家へ
セックスレスを理由に離婚をしたい、慰謝料請求をしたい、でも何から手をつけたらいいのかわからない・・・。こういった悩みを抱えている方は、まずは専門家への相談を検討しましょう。
専門家であれば、現状でセックスレスを原因とした法律上の離婚ができるのか、慰謝料請求ができるのか、といったことを法律的な目線から判断してもらうこともできますし、協議離婚の間に入ってもらうことも可能となっています。
まるで知識のない二人で協議離婚をするよりも、専門的な知識とアドバイスを受けながら協議離婚をしたほうが、後々揉める心配も少なくなるといえます。