母子家庭の手当と助成金まとめ。シングルマザーの支援制度は意外に多い?
母子家庭が増え続けていることはご存じですか?
国内のシングルマザーは2010年の総務省統計局のデータによると108万2千人にものぼります。
その原因は夫との死別や未婚出産などのケースもありますが、8割が離婚によるものです。
- 離婚 87万人
- 未婚 13万人
- 死別 7.8万人
現在の日本では、結婚した夫婦の3組みに1組みが離婚しています。離婚率の上昇に比例してシングルマザーの数は今も増え続けているのです。
データが示すように、今は家庭が円満でも、いつ夫婦仲が怪しくなり離婚に発展するか分かりませんね。誰もが、ある日突然、母子家庭になるとも限らない訳です。
しかし、残念なことに、今の日本社会はシングルマザーに対して決して寛容ではありません。いわれなき偏見や差別が存在するのは事実です。
また、経済的に厳しい生活に直面している母子家庭・父子家庭が多いのが実情です。
だからこそ、国や地方自治体の支援制度(セーフティーネット)が重要なのです。
【参考】シングルマザーの最近の状況(2010年) 総務省統計研修所 西 文彦
母子家庭の生活実情
厚生労働省は定期的にシングルマザーの生活実態についてアンケート調査をおこなっています。
平成26年3月に発表された「ひとり親家庭の支援について」見ていくと母子家庭の生活実態が浮かび上がってきます。
[出展]http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/shien.pdf
日本の1世帯あたりの平均所得金額は537万円です。
(平成25年 厚生労働省発表)シングルマザーの平均収入は223万円ですので半分以下です。経済面で厳しい生活を送っている世帯が多いことが分かります。
国や自治体の支援制度を活用しよう
そんな、増え続ける母子家庭に対して、国や自治体は各種の経済的支援をおこなっています。
さまざまな支援制度が設けられていますが、残念ながら、そのことはあまり広く知られていないようです。
このコラムでは、母子家庭にとって生活に役立つさまざまな経済的な支援制度をまとめました。
現在、シングルマザーの方も、友人・知人や身内にシングルマザーが居る方も、「私ももしかして、これから…」という方も、是非参考にして頂ければと思います。
支援制度はきっと、あなたの生活に役立つことでしょう。
国や自治体が設けるシングルマザーへの支援制度
シングルマザーへの各種支援制度の目的は、「母子家庭の自立」と「子供の成長を守る」ためです。支援の内容や条件は各都道府県によって異なりますが、基本的には同じ考えです。
地域の役所に行けば親切・丁寧に説明してくれます。子供の生活を守るために是非このような制度があることを知って欲しいと思います。
では、シングルマザーに対してどのような支援が設けられているのか確認してみましょう。
手当と助成金
手当とは、給与などに含まれる諸費用などの賃金のことを指します。
また、助成金とは融資などと違い返済の必要がない国や自治体から貰えるお金のことです。
ここで言う、手当と助成金とは、シングルマザーの養育や生活を地域がサポートするために出すお金です。各種の手当や助成金を見ていきましょう。
1 児童扶養手当
児童扶養手当は子どもの養育に関する手当です。支給要件があり、また地域によって支給される金額が変わる場合があります。
最高額で40,000円以上の手当が支給される場合がありますので、必ず申請しておきたい手当です。
ご相談や申請はお住まいの地域の福祉課などでできます。
子供の人数 | 全額受給(月額) | 一部受給(月額) |
---|---|---|
1人 | 41,020円 | 41,010~9,680円 |
2人 | 46,020円 | 46,010~9,680円 |
※3人目から子供が1人増えるごとに3,000円加算
2 特別児童扶養手当
20歳以下の子供で身体や精神に障害を持つ場合に、福祉の促進を図る目的で支給される児童扶養手当の制度です。
手当の金額は障害の等級により変わります。
- 1級・・・月額¥50,750円
- 2級・・・月額¥33,800円
3 住宅手当
20歳未満の子供を養育しているシングルマザーで、月に1万円以上の家賃を払っている場合に適用される助成制度です。
収入で判断される制度となり、誰でも受けられるわけではありません。予め地域の福祉課に確認しましょう。
4 生活保護
経済的な生活困難者に対して、自力での生活ができるように支援する制度です。地域で定められた生活保護基準をもとに支給されます。
但し、世帯収入が生活保護基準額よりも多い場合には受給できません。市区町村の生活保護窓口に問い合わせてみましょう。
5 就学援助
ご存知の通り、小・中学校の義務教育では授業料は無料ですが、就学時にはさまざまな費用が必要になります。
これらの費用を支援するための就学援助制度が各自治体に設けられています。通学先の学校や地域の教育委員会などに申請することで一定の金額が支給されます。
〈援助の種類〉
- 学用品費
- 通学費
- 修学旅行費
- 体育実技用具
- 給食費
- 医療費
- 宿泊校外活動費
減免・減税
減免とは、本来支払うべき料金などを軽減したり免除することです。また、減税は本来の税金額を減らして貰うことです。
日常的に利用する交通機関が割引になったり、公共料金が減免されるなど、母子家庭にとっては出て行くお金が少なくなることは多くのメリットがあります。
減免・減税の支援制度を見ていきましょう。
6 国民年金・国民健康保険
会社勤めの場合には社会保険に自動的に加入するケースが一般的です。しかし、パートやアルバイトのシングルマザーは国民年金を支払わなくてはなりません。
国民年金は減免、免除などが受けられる場合があります。但し、将来受け取る年金額が減りますので注意が必要です。
また、国民健康保険は所得が低い場合や保険料の支払いが難しい人は減免が可能になります。お住まいの市区町村に問い合わせてみましょう。
7 所得税・住民税の減免
地域の自治体に支払う所得税・住民税は金額も小さくないためシングルマザーにとっては大きな負担になります。
所得が少ない場合には、これらの税金を減額できる制度があります。地域の福祉課に問い合わせてみましょう。
8 医療費助成制度
子育てで不可欠となる医療の問題をサポートする制度です。
子供が18歳まで受けられ、病院や調剤薬局など保険診療分の自己負担額を無料にしてくれます。
ただし、収入に応じて条件が異なりますので、地域の福祉課に問い合わせましょう。
9 保育料の免除・減額
保育料の免除や減額できる制度です。年収に応じて減額される金額が変わるケースが多いようです。お住まいの役所に問い合わせてみましょう。
10 公営住宅
生活困窮しているシングルマザーに対して公営住宅の優先入居の制度です。地域によっては、優先入居がなく、通常通りの順番待ちや抽選となるケースもあります。
お住まいの福祉課に問い合わせてみましょう。
11 交通機関の割引
定期券の購入が3割引になったり、バスや電車の料金が無料になったりと、交通機関の利用を支援するための制度です。割引率や条件が地域よって異なります。
お住まいの各交通機関に問い合わせてみましょう。
12 水道料金の割引
地域の上下水道局が設けている制度です。水道料金の全額が免除されたり、大幅な割引が認められたりと、シングルマザーの生活をサポートしています。
地域によっては制度を設けていない市町村もあるようです。水道局に確認してみましょう。
13 粗大ごみ処理手数料の減免
粗大ごみの処理手数料が減免される制度です。
市区町村の粗大ごみ窓口へ確認してみましょう。
貸付と利息の優遇
子供が義務教育を終えて、高校・大学に進学する場合には大きな出費が必要になります。
また、母親自身が夢を叶えるための事業資金や技能習得においても、まとまったお金が必要です。
そんな時に母子家庭を支援するための貸付を利用すると有利な条件で借入れできます。また、定期預金でも利息の非課税や高い利息を受取ることができます。
14 母子福祉資金貸付金
20歳未満の子供を養育しているシングルマザーが対象の貸付制度です。
母親の経済的自立や子供の福祉を促進するための貸付制度です。
利息なし、または低い金利で公的な機関から貸付を受けられます。
収入や生活状況に応じて返済計画が組み立てられるので、なるべく負担が少なくなるよう配慮されています。
また、自治体により貸付金の種類は違いますので福祉課に問合せが必要です。
〈貸付金の種類〉
- 事業開始資金(事業開始に必要な設備・資材購入資金)
- 事業継続資金(事業の運転資金)
- 修学資金(高校、大学、専修学校に就学させるための資金)
- 修業資金(子供の事業開始、就職技能習得)
- 技能習得資金(母の就職技能習得)
- 就職支度資金(母、子供の就職に必要な被服購入費など)
- 医療介護資金(母や子供が医療あるいは介護を受ける資金)
- 生活資金(生活維持に必要な資金)
- 住宅資金(住宅の補修・増改築に必要な資金)
- 転宅資金(借家入居時の敷金・前家賃など)
- 結婚資金(子供の婚姻に必要な資金)
ほか
15 預金利子非課税制度
元本350万円までの預金に対して利息が非課税になる制度です。
一般的にいうマル優という制度です。金融機関に問い合わせてみましょう。
16 福祉定期預金
障害基礎年金、遺族基礎年金受給者が利用できる定期預金で通常よりも高い利息を受け取ることができる制度です。
ゆうちょ銀行の「ニュー福祉定期預金」が有名です。
補足 離婚による慰謝料について
沢山の支援制度の手続きや申請をおこなう前に、離婚慰謝料や養育費の請求、親権問題などを解決しておいた方が良い場合があります。
しかし毎日の生活が忙しく十分な交渉ができない、初めてのことで離婚慰謝料の相場が分からないなど、満足できる結果にならない場合があります。
そのような際には離婚問題に強い弁護士に依頼することをオススメします。
まとめ
母子家庭になる経緯は人それぞれですが、離婚、死別、未婚出産など、大きな苦しみとストレスを抱えたまま母子家庭になるケースがほとんどです。
周囲に生活をサポートしてくれる人がいれば良いのですが、シングルマザーの中には1人で問題を抱え込んだまま子供の養育をおこなう人も少なくありません。
そんな中で、シングルマザーの多くが経済面や生活資金などで深刻な悩みを抱えるようです。収入が増えれば多くの問題は解決できますが、それは簡単なことではありませんね。
だからこそ、セーフティーネットである「手当」、「助成金」、「減免・減額」などの支援制度を積極的に活用して欲しいと思います。
これらの支援制度を活用することで、経済的に余裕ある生活を送れるかというと必ずしもそうではないでしょう。しかし、生活の一助になるのは間違いありません。
もし、周囲にシングルマザーの女性が居たら、これらの支援制度を教えてあげるときっと喜ばれるのではないでしょうか。