養育費の支払い義務について|支払い期間・金額から自己破産や相続などとの関係まで徹底解説

現代では以前より離婚が増えたといわれています。それぞれの夫婦の事情で異なるものの、話し合い(協議)で済めば、すぐに離婚を成立させることもできます。

しかし、離婚にはお金の悩みがつきものです。

もしあなたが専業主婦の場合、離婚をすれば働く必要があります。さらに、あなたに監護権がある場合は、子供を養っていかねばなりません。

今後の生活や子供の将来を考えれば、「養育費」は絶対にもらわなければいけないお金なのです。

「養育費の支払い」は義務ですが、自己破産や死亡といった事情により、支払いが滞ったり、約束した額が支払われないというケースが多くなっています。

この記事では、「養育費の支払い義務」についてわかりやすく解説するとともに、養育費の支払いが遅れたり、支払われない時の対処法についてもお伝えします。

養育費とは

養育費とは、「子供を養育しない親(非監護親)が子供を養育する親(監護親)に支払うお金」のことをさします。

子供を育てていくには、様々な費用がかかります。食費や衣服代だけでなく、学校に通うようになれば授業料や教材費、習い事や部活動にかかる費用など、どんどん支出が増えていきます。

こうした子供にかかる費用は、子供を養育しない親も負担しなければなりません。非監護親は、子どもを養育している親に「養育費支払い」の義務を負っているのです。

養育費の支払いについては、法律的な根拠が存在しています。

養育費の根拠となる法律

養育費の根拠となる法律は以下の2つです。

  • 民法766条:子供の世話や教育に関する費用などについて協議や裁判所で決めることが記載
  • 民法877条:祖父母・父母などの直系血族に扶養する義務があることが記載

特に民法766条については平成23年から改正され、子供の監護に必要な費用の分担が明記されたほか、費用を決めるにあたっては「子供の利益を最優先」に考えなければいけない旨も書き加えられました。

養育費はどのように決めるのか

民法766条に定められている通り、養育費は「離婚の際に夫婦で決めること」になっています。

夫婦の話し合い(協議)で決めることができない時は、裁判所が間に入り決めていきます。

裁判所が介入する場合、夫婦それぞれの収入や資産状況などを見て判断していきます。

養育費の支払い期間

養育費の支払い期間は、「子供が20歳に達するまで」というのが一般的です。

ただし、子供が結婚した場合は、仮にそのとき20歳未満であっても成人とみなされます。そのため、養育費の支払い義務はなくなります。

もちろん夫婦間の合意があれば、子供が成人した後も養育費の支払いを受けることができます。

たとえば、支払い期間を「子供が大学を卒業する22歳の3月まで」とすることも可能です。

また、心身の障害などによって子供が仕事をすることができない時は、成人した後でも養育費の支払いを裁判所から命じてもらうこともできます。

養育費の金額

夫婦間の話し合い(協議)で決める場合、養育費の金額に決まりはありません。お互いが合意できた金額が養育費となります。

一方、裁判所が介入し養育費の金額を決める際には、「養育費算定表」を参考にします。

この「養育費算定表」は、「子供の人数・年齢」「支払う側と受け取る側の年収」などから養育費の目安となる金額を参照することができます。

ただし、「養育費算定表」はあくまでも目安です。養育費では、他にも様々な事情が考慮されます。実際の養育費の額は、個別のケースを検討しなければ算定することができないのです。

「養育費はいくらぐらいもらえるのか」具体的な金額が知りたい方は、弁護士に相談してみることをお薦めします。

養育費の支払い義務に関するよくある疑問

ここからは、養育費の支払い義務について、疑問になりやすい点を紹介していきます。これらの疑問については、当サイトにも数多く寄せられてきます。

養育費の支払いに関して「口約束だけ」でも有効?

養育費について口約束で決めた場合も、当然「有効」です。

しかし、口約束だけでは「そんなこと言っていない」と相手が否定する可能性が高くなります。その場合、

  1. 再度養育費の支払いについて話し合い「公正証書」にする
  2. 裁判所に養育費請求の調停を申し立てる

という手順を取らなければなりません。調停が済んでも相手が養育費を払わない場合、裁判所に申し出ることで、相手に財産を差し押さえることも可能になります。

養育費請求権の時効はあるの?

養育費はいつまでも請求できるわけではありません。養育費請求権には時効があり、金額が決められた時点から「5年間」で時効が成立します。

そのため、養育費が支払われない状態を5年放置しておけば時効が成立し、養育費を受け取れなくなってしまします。

夫婦の話し合いで養育費が決まらず、裁判所が介入した場合には「時効が10年」に伸びます。

ただし「養育費の金額が決まっていない」場合には、時効が成立することはありません。

監護親が再婚した場合、養育費支払いの義務はなくなる?

たとえば、子供を引き取った妻が「別の男性と再婚」をしたとしましょう。この場合、元夫の養育費支払い義務がなくなると思っている方がいますが、それは間違いです。

非監護親である(元)夫には、たとえ妻が別の男性と再婚しても養育費の支払い義務が消えることはありません。

ただし、「子供」と「再婚相手の男性」が養子縁組をした場合は事情が変わってきます。

養子縁組をすると扶養義務が移る

養子縁組とは、血縁関係によらず、当事者の意思で親子関係を発生させることをいいます。この養子縁組は、養育費の支払い義務に影響を与えます。

「子供」と「再婚相手の男性」が養子縁組を結んだ場合、「再婚相手の男性」が新しい親として扶養義務を負うことになります。

しかし、養子縁組で実親(元夫)の扶養義務が消滅するわけではありません。子供を扶養義務は残ります。

もし「再婚相手の男性」が失業などで収入がなくなれば、実親(元夫)が子供に対し養育費を支払わなければならないのです。

妻の側が養育費の支払い義務を負うこともあるの?

養育費を支払うのは、必ず「男性(夫)」というわけではありません。

養育費の支払い義務があるのは、非監護者、つまり「子供を養育しない親」です。

もし夫が監護者となり子供を養育していく立場になれば、養育費の支払い義務を負うのは妻になります。

元夫が自己破産した場合でも養育費を払ってもらえる?

借金の返済が苦しくなり自己破産するというケースは決して珍しいことではありません。

自己破産をすると「免責」を受け、借金の支払い義務をなくすことができます。

しかし、借金の支払い義務はなくなっても、養育費の支払い義務は消えることはありません。

養育費は、「非免責債権」という、自己破産をしても免除されないものに含まれています。そのため、たとえ夫が自己破産をしても養育費の支払いを受け続けることができます。

元夫が死亡した場合の養育費支払いはどうなる?

病気や事故で元夫が死亡した場合、養育費の支払いはどうなるのでしょうか。

基本的に、夫の養育費支払い義務は死亡と共に消滅し、親類縁者などには相続されることはありません。

ただし、「未払いの養育費」、つまり生前に受け取るはずだった養育費に関しては相続されるので、元夫の相続人に対して請求することができます。

祖父母(元夫の両親)が養育費の支払い義務を負うことはある?

養育の支払い義務を負うのは、あくまでも非監護者である元夫です。

しかし、その元夫に「支払い能力がない」場合、夫の両親である祖父母が支払い義務を負うことがあります。

民法877条には、「直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務がある」と定められています。離婚したとはいえ、元夫の祖父母も「子供の直系血族」の関係になるため、養育費の支払い義務が生じるのです。

ただし、「親として子供に負う支払い義務」と「祖父母として孫に負う支払い義務」は異なります。親の場合、たとえ自分の生活が苦しくても、養育費を払い続けなければなりません。

一方、祖父母の場合、自分たちに「金銭的余裕がある時」に、養育費の支払い義務が生じます。逆に言えば、自らの生活が苦しく余裕がない状態では、孫に養育費を支払う必要はないということです。

生活に余裕がある・ないに関しては、個別に検討しなければならないため、弁護士に一度相談する必要があるでしょう。

結婚・離婚していなくても養育費支払い義務が生じるケース

ここまで、「離婚後の養育費の支払い義務」について詳しく解説してきました。実は、結婚・離婚していない場合でも、男性が養育費の支払い義務を負うケースがあります。

それは「認知をした時」です。認知とは婚姻関係にない男女の間に生まれた子供を法律上の手続きによって「自分の子供」とすることをいいます。

認知をして親子関係になれば、男性は養育費の支払い義務を負うことになるのです。

養育費の支払われない場合はどうすればいい?

養育費の支払いは義務であり、必ず支払わなければならないものです。しかし、離婚後しっかりと養育費が支払われるケースは多くありません。支払う割合は、3割程度だと言われています。

約束したはずの養育費が支払われなければ、生活が苦しくなる恐れがあります。こうした場合はどうすればいいのでしょうか。

支払われない養育費を請求するための手順

養育費が支払われない場合、以下のような手順で請求していく必要があります。


【養育費が支払われない時に取るべき手段】

1 相手に電話やメールなどで養育費を支払うよう催促する
2 養育費の支払いについて「内容証明郵便」を送る
3 家庭裁判所の調停を利用する(養育費支払調停)
※養育費の支払いに関して、すでに調停調書や勝訴判決がある場合には「履行勧告」「履行命令」を出してもらう
4 地方裁判所に「強制執行」の申し立てをおこなう

この手順で進めていくことで、ほぼ確実に養育費の支払いを受けることができるようになります。

養育費の減額を検討する必要も

決められた養育費を支払うことは大切です。

しかし、職を失ったり、病気をしたりして収入が低下した場合、約束した養育費を支払い続けることが難しくなることもあるでしょう。相手が再婚をして新しく子供ができた場合も同様です。

こうしたケースでは、相手方から「養育費の減額」を求められることがあります。

相手から減額を求められた場合は、お互いで話し合いを持ちます。2人の話し合いで結論が出なければ、調停や裁判で決着をつけることになります。

養育費についての悩みは弁護士に相談を

養育費の支払いは義務であり、原則としてこの義務が消滅することはありません。

ただし、支払う金額や期間などそれぞれの状況によって大きく変わってきます。近年では、リストラなどが原因で収入がなくなり、養育費を支払えないというケースも増えています。

離婚時に決めたことをそのまま適用できない場合もあるのです。こうした場合には、状況の変化に応じた「適切な解決策」を考える必要があります。

しかし、調停や裁判所への申し立てなど、知識や経験がなければ簡単にできることではありません。そんな時こそ法律の専門家である弁護士の力を借りるべきです。

当サイトが紹介する弁護士は、離婚問題に強い弁護士ばかりです。「養育費が支払われない」「養育費の金額が少ない」といったケースについて、数多く解決に導いてきました。

養育費は子供の将来のために欠かせないお金です。養育費の支払いについて問題を放置していれば、後々大変な事態を招きかねません。

養育費に関して悩みや不安がある場合、まずは弁護士に相談してみてください。弁護士がきっとあなたの力になってくれます。

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