養育費の支払いが困難な時、払わない方法はある?

様々な事情から離婚せざるを得なくなった時、子供の存在は大きな問題となります。

未成年の子供を養い育てるには、手間暇が掛かるだけでなく、相当の費用が掛かるからです。

たとえ離婚が成立したとしても、子供の親であることには変わりありません。そのため、子育ての費用(養育費)も負担する義務が生じます。

しかし、時には離婚相手との関係や経済的事情から、「養育費を払えない」あるいは「払いたくない」というケースもあるでしょう。

そこで、この記事では、養育費を払わないで済む方法があるか、また払えない時の対処法についてご説明します。

そもそも養育費は必ず払うべきか

養育費とは、子供を育てるための費用です。衣食住に掛かるお金のほか、医療費や教育費なども含まれます。

結婚して共に生活していれば、家計も一緒になので問題はありません。

しかし、離婚して別居する場合、養育費は「子供と一緒に生活する親(監護者)に、子供と離れて暮らす親(非監護親)」が支払っていくものなのです。

では、この養育費、いかなるときでも支払うべきものなのでしょうか。

支払いは法律を根拠に義務付けられている

養育費の支払いは親の義務であり、それを受け取るのは子供の持つ権利です。

加えて、養育費は離婚相手への扶助という性質も持ち合わせています。

そのため、法律にはそれぞれの側面から養育費の支払いに関連する規定があります。

  • 民法第752条(夫婦間の扶助義務)
  • 民法第760条(婚姻費用の分担)
  • 民法第766条1項(離婚後の子の監護に関する事項)
  • 民法第820条(監護及び教育の権利義務)
  • 民法第877条1項(扶養義務者)

このうち民法第766条1項には、子供の利益をもっとも優先して考慮すべきという旨の定めがあります。

養育費の規定は、離婚によって弱い立場に置かれる子供を保護することを重視しており、養育費の支払いは義務なのです。

なお、実の子供に対する養育費支払い義務は民法第766条1項が、養子に対しての支払いを定めた義務は民法第820条が根拠となります。

養育費を払わないとどうなるか

民法には、養育費を支払わなかった場合に罰を与えるという定めはありません。

つまり、仮に養育費を払わなかったとしても、懲役や罰金といった刑罰を受けることはないのです。

しかし、だからといって養育費を払わないで済むことにはなりません。

法律上に支払い義務の根拠規定があるということは、要するに借金(債務)がある状態に似ています。

養育費の不払いが続くと、「5%の利率の遅延損害金」が生じたり、財産の差し押さえを受けて強制執行をされる恐れもあります。

払いたくないからという理由で、養育費を支払わないのは絶対にやめるべきです。

養育費をどうしても払えない時、払わない方法はある?

養育費を「払いたくても払えない」という状態になることは珍しいことはでありません。

たとえば、突然の事故や災害、勤め先の倒産など、働くことができず給料がもらないということになる可能性もあるのです。

こうした特別な事情がある場合、養育費は支払わなくてもよいのでしょうか。

払わない方法はないが、払わなくてよい場合はある

結論から言うと、どのような事情があるにせよ、養育費を支払わずに済む方法は原則としてありません。

なぜなら、養育費の支払いは親としての義務であり、離婚したからと言って払わないことで犠牲になるのは子供だからです。

ただし、監護者の合意や生活状況の変化などで、養育費を払わずに済む可能性はあります。

養育費を払わずに済むケース

養育費を払わずに済むケースとして、以下の4つがあります。

  • 養育費の不払いについて、双方で合意した場合
  • 離婚した相手が再婚し、その再婚相手が子供と「養親縁組」をした場合
    ※ただし、養育義務が消滅したわけではないため、再婚相手の経済力が不足した場合は支払う必要あり。
  • 養育費請求権の時効となった場合(最初の支払い日から20年経過・最後の支払い日から10年経過など)
    ※相手方が「請求権を行使し続ける限り」は時効にならない
  • 「自分の子ではない」と裁判で認められた場合(「嫡出否認の訴え」を起こし、親子関係を否定する)

なお、自己破産をしたとしても、養育費の支払い義務が消えることはないので注意してください。

支払いが厳しい時は「減額請求」も検討すべき

養育費の支払うことができない場合は、「養育費を減額してもらう」と手段もあります。

不払いでリスクを負うより、減額請求が得策

減額請求とは、相手方や家庭裁判所に対して「養育費の額を減らしてほしい」と頼むことです。

減額請求をすることで、「遅延損害金の請求」や「強制執行」のリスクを解消することができるのです。

一度取り決めた養育費の額を減らすように頼むのは後ろめたく感じるかもしれませんが、不払いよりは得策であると考えましょう。

こんな場合に減額請求が可能

減額請求は、「支払いたくない」という理由だけで認められることはありません。

減額請求が可能なケースは、大きく分けて3つあります。

  • 失業や転職などで収入が著しく下がった場合
  • 子供の養子縁組はしていないが、監護者が再婚した場合
  • 養育費を支払う側が再婚し子供をもうけた場合

上記のような場合には、高い確率で養育費を減額することができるでしょう。

減額請求の手段は大きく3つ

減額請求は、以下の順番でおこなっていきます。

  1. 協議:相手方との話し合い
  2. 調停:裁判官や調停委員立ち合いのもとでの話し合い
  3. 審判: 双方の主張を聞き、家庭裁判所が最終的に判断

協議では話し合いなので、特に必要な書類などはありません。

しかし、調停や審判の際には「手続上の書類」「減額請求に正当性があることを示す資料」が必要となります。

具体的には、「事情説明書」「調停の進行照会書」「減収を示す源泉徴収票や給料明細・確定申告書の写し」などを調停委員や裁判官に提出しなければならないのです。

このほかに、養育費の調停申立書や子供の戸籍謄本も用意する必要があります。

請求が認められたら、いつから減額になる?

減額請求が認められたとしても、実際にはいつから養育費を減らせるのでしょうか。

家庭裁判所における実務上は、「減額の請求時点」もしくは「調停の申立時点」とされています。

つまり、「協議で養育費を減らしてくれるように請求した時点」あるいは「調停を申し立てをした時点」から減額になるのです。

ただ、これは家庭裁判所の裁量に委ねられている事柄でもあるため、個別の事例によって変わることもあります。

養育費を払わない方法はないかとお悩みの方は、弁護士へ相談を

養育費の支払いは親の義務でもあり、子供の権利でもあります。しかし、失業や病気などで養育費が払えなくなることもあるでしょう。

そのような場合には、払わないという選択をするのではなく、減額請求をするようにしてください。

ただし、相手方も生活があるため、すんなりと減額に応じてくれるケースは多くありません。そうなれば、調停や審判をすることになります。

調停や審判になれば、必要な書類を集めたり、「減額してもらうだけの理由があること」を立証しなければならないのです。これらをすべて1人でおこなうのは簡単ではありません。

「養育費を支払うのが苦しい」「何とか減額してもらいたい」「相手方に減額を拒否された」などのお悩みをお持ちであれば、一度弁護士に相談されることをおすすめします。

双方にとって望ましい解決を導くためにも、ぜひともご検討ください。

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