離婚の養育費の相場・計算方法を解説|養育費を増額するにはどうすればいい?

離婚を考えた時に不安になるのは今後の生活費です。

特に子供がいる場合には、「自分の収入だけで子供を育てられるのか」心配になる方は大勢いらっしゃいます。

その不安を少しでも減らすためには、離婚した相手に「適正な養育費」を支払ってもらう必要があります。

一般的に、養育費は離婚する際にお互いが話し合って決められますが、相場がわからなければ決めようがありません。

そこで、この記事では養育費の相場・計算方法について詳しく解説していきます。

さらに、養育費の請求方法や増額の方法について紹介するので、しっかり読んで離婚後の生活に備えてください。

養育費について – その相場や計算方法

養育費とは、「子供が育てていく上でかかる費用全般」を指し、離婚時に「20歳以下の子供」がいる場合に相手から支払ってもらうことができます。

養育費には一律に決められた金額は存在しないため、夫婦の話し合いで額を決めることができます。

しかし、相場がわからなければ決めることは難しいでしょう。

養育費の相場を知るための「養育費算定表」

「養育費の相場」は、東京・大阪の両家庭裁判所が中心となり作成した「養育費算定表」で知ることができます。

この養育費算定表を使えば、「権利者(受け取る側)の年収」「義務者(支払いをする側)の年収」、「子供の人数・年齢」の3点から「養育費の相場」を求めることが可能です。

養育費算定表は「9種類」あり、「子供の年齢・人数」に応じて、以下のように分けられています。

【養育費算定表の種類】

  • 子1人表(0~14歳)
  • 子1人表(15~19歳)
  • 子2人表(0~14歳:2人)
  • 子2人表(0~14歳:1人、15〜19歳:1人)
  • 子2人表(15~19歳:2人)
  • 子3人表(0~14歳:3人)
  • 子3人表(0~14歳:1人、15~19歳:2人)
  • 子3人表(0~14歳:2人、15~19歳:1人)
  • 子3人表(15~19歳:3人)

「養育費算定表」を見方について

では、実際に養育費算定表を使って、養育費の相場を見ていきましょう。

この記事では、「子1人表(0~14歳)」を例に養育費算定表の見方を説明していきます。

養育費算定表では、縦軸は「養育費を支払う側の年収」を示しています。

横軸は「養育費を受け取る側の年収」を示しています。

そして、両軸の交わった部分が「養育費の相場(目安)」となるわけです。

なお、収入については、会社員(給与所得者)の場合「控除される前の源泉徴収票の“支払金額”」を、自営業者の場合「年収から実際にかかった“経費を引いた額”」を用います。

上の表を見ながら、子供が1人の場合の養育費の相場を確認してください。

【養育費例:子供が1人の場合】

子供の年齢 義務者の年収 権利者の年収 養育費相場(会社員) 養育費相場(自営業)
2歳 800万円 0円 8~10万円 10~12万円
5歳 540万円 100万円 6~8万円 6~8万円
7歳 400万円 300万円 2~4万円 4~6万円
14歳 325万円 300万円 1~2万円 2~4万円

※義務者=「養育費を支払う親」、権利者=「養育費を受け取る親」

養育費算定表の金額には相場でも1〜2万円の差があります。できるだけ多くの養育費をもらうためには、相手にしっかりと伝えるべきです。

また、養育費算定表は「子供が公立学校に通った場合」を前提にされています。

そのため、私立学校に通っている場合など、その学費が考慮される場合があります。

養育費算定表が使えないケース

養育費算定表は、裁判所が養育費の算定をする際に参考として活用している資料です。

「一般的な家族構成」をベースに作成した資料であるため、以下のようなケースでは算定表が使用することができません。

  • 子が4人以上いる場合
  • 一方の親が再婚した場合
  • ほかの配偶者との間に子供(連れ子)がいる場合
  • 複数の子を、双方の親が別々に引き取る場合

こうしたケースでは、各家庭の事情に応じて計算を用いて養育費の額を算出しなければなりません。

計算式で「養育費」を求める方法

おおよその養育費の相場が知りたい場合、「養育費算定表」を見ればすぐにわかります。

しかし「養育費算定表」に当てはまらないケースでは、この表のもとになっている「標準算定式」を使い計算しなければなりません。

この標準算定式は実務でも使われており、「養育費を増額して欲しい時」などにも応用することができるため、知っておいて損はないでしょう。

標準算定式の基本

標準算定式の基本的な考え方は、「子供の生活費」を両親それぞれの収入(年収)に応じた割合で負担していくというものです。

子供の生活費については「収入の内、何割が使われているか」を求めるため、以下の式が使われます。

子供の生活費=義務者の基礎収入×子供の生活費指数÷(子供の生活費指数+義務者の生活費指数)

そして養育費は、以下のような計算式で求めます。

養育費=子供の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)

基礎収入とは

ここでいう「基礎収入」は「養育費算定表」の意味とは異なります。

「標準算定式での基礎収入」とは、会社員(給与所得者)の場合は、支払総額から「税金・職業費(通勤費用、被服費等)、特別経費(住居関係費、保健医療費、保険掛金など)」を差引いたものを意味します。

自営業者の場合、課税所得から「税金・特別経費(住居関係費、保健医療費、保険掛金など)」を差引いたものです。

わかりやすく、「可処分所得」だと考えていただいて問題ありません。

この基礎収入は「年収に応じて割合」が決まっています。会社員と自営業では異なっているため、それぞれ確認してください。

【会社員(給与所得者)の場合】

  • 0~100万円:42%
  • 100~125万円:41%
  • 125~150万円:40%
  • 150~250万円:39%
  • 250~500万円:38%
  • 500~700万円:37%
  • 700~850万円:36%
  • 850~1,350万円:35%
  • 1,350~2,000万円:34%

【自営業の場合】

  • 0~421万円:52%
  • 421~526万円:51%
  • 526~870万円:50%
  • 870~975万円:49%
  • 975~1,144万円:48%
  • 1,144~1,409万円:47%
生活費指数とは

生活費指数は、「どのくらいの生活費がかかるのか」をわかりやすく数値化したものです。生活費指数は、「大人:100」「15〜20歳未満:90」「15歳未満:55」と表されます。

具体例から養育費を計算する

では、「養育費算定表」にない「子供が4人いる」ケースで計算してみましょう。家族構成は以下のようになっています。

父親(養育費を支払う側=義務者):年収800万円
母親(養育費を受け取る側=権利者):年収300万円
子供4人:全員15歳未満

まずは、「両親の基礎収入」と「それぞれの生活費指数」を求めておきます。

【基礎収入】

  • 父親(義務者)の基礎収入:288万円(=800万円×36%)
  • 母親(権利者)の基礎収入:114万円(=300万円×38%)

【生活費指数】

  • 父親(義務者):100
  • 母親(権利者):100
  • 15歳未満の子供:55×4人

これらの数字を子供の生活費を求める式「義務者の基礎収入×子の生活費指数÷(子の生活費指数+義務者の生活費指数)」に当てはめると以下のようになります。

子供の生活費=288万円×(55×4人)÷(55×4人+100)=198万円

子供の生活費が求められたら、養育費の計算式「子の生活費×義務者の基礎収入÷(義務者の基礎収入+権利者の基礎収入)」に当てはめていきます。

養育費=198万円×288万円÷(288万円+114万円)≒141万円(小数点以下切り捨て)

この141万円は年間の養育費の額になるのでこれを12ヶ月で割ると、1ヶ月あたりの養育費が算出されます。

141万円÷12ヶ月=11万7,500円

この11万7,500円が1ヶ月に支払ってもらえる養育費となります。

算定表や計算式は絶対ではない

養育費算定表が作成される前、それぞれの事情を考慮した養育費の算定していました。

しかし、これでは時間がかかりすぎてしまい、裁判所・当事者にとってデメリットが大きいという理由から、養育費算定所が作成・使用されてきた背景があります。

そのため、「養育費算定表」の養育費は「あくまでも相場」であって、絶対に守らなければいけない金額ではないのです。計算式も同様です。

本来、養育費は親の収入や子供の年齢・人数等で「マニュアル的」に決定されるのではなく、個別具体的な事情を考慮すべきだと言えるでしょう。

日弁連が発表した「新算定表」

平成28年11月、日弁連(日本弁護士連合会)が「新しい方式による養育費・婚姻費用算定表(新算定表)」を発表しました。

新算定表では、基礎収入から「特別経費を差し引かない」ため、養育費の増額が見込めます。

さらに、生活指数に関しても「子供の年齢に応じて細かく設定」しているため、子供が多ければ多いほど、養育費を増額することができるのです。

現在のところ、裁判で用いられてはいませんが、今後養育費をめぐる裁判で実用化される可能性は十分にあります。

また、新算定表を使用しなくとも、弁護士が介入することで、相場よりも高い養育費を請求できる可能性が高まります。

離婚の養育費の請求方法・手順について

養育費の支払いに関する様々な事柄は、一般的には「協議離婚(話し合い)」で決めていくことになります。

この協議離婚でスムーズに決めることができればいいですが、話し合いがうまくいかないケースも多々あります。

協議離婚で合意できなければ、「離婚調停」といって裁判所に仲介をしてもらって離婚や養育費に関する条件を決めていくことになります。

以下では、それぞれの方法について詳しく解説していきます。

協議離婚(話し合い)によって養育費を決める方法

協議離婚とは、「養育費」をはじめ「財産分与」「慰謝料」「親権者・監護者」「面会交流」「婚姻費用」など、離婚後に関する様々な取り決めを話し合いで決め、離婚をすることです。

協議離婚では、お互いが合意すれば「養育費」に関して自由に決めることができるのです。協議離婚に際して決めておくべき養育費の事項は以下のようになります。

  • 養育費を支払う期間:子供が「何歳になるまで」養育費を払うのか
  • 養育費の支払い時期:「毎月払い」「指定月の支払い」「半年ごとにまとめて支払う」等
  • 養育費の支払い方法:銀行振り込み、手渡し等

協議離婚(話し合い)で養育費をできるだけ多くもらうためにすべきこと

養育費を少しでも多く支払ってほしいと考えるのであれば、しっかりと話し合いをしなければいけません。

月の養育費が1万円でも変われば、子供が独立するまでにかなりの違いが出てきます。

できるだけ多くの養育費を獲得するためには、「養育費を支払う側の年収」をしっかり把握したうえで、子供の将来を見据えることが大切になります。

たとえば、

  • どんな習い事をさせるのか
  • ○歳から塾に通わせる予定
  • ○○中学・○○高校学校を受験させたい
  • 専門学校ではなく、大学に進学させたい

などの計画を立てた上で、相手と交渉することが重要なのです。

交渉にあたっては、あまりに「現実離れした要求」は通りませんが、子供の将来に関することであれば相手も真剣に話し合ってくれるでしょう。

養育費に関する取り決めの内容は、必ず「離婚協議書(離婚に関する合意書)」に記載し、「強制執行認諾約款付き公正証書」にしておく必要があります。

強制執行認諾約款付き公正証書とは?

「強制執行認諾約款付き公正証書」とは、協議で合意した内容に法的な強制力を持たせるものです。

つまり、「強制執行認諾約款付き公正証書」があれば、養育費が約束通り支払われない場合、法的に相手の給料や財産を差し押さえることが可能になります。

強制執行認諾約款付き公正証書の作成方法

「強制執行認諾約款付き公正証書」は、全国どこの公証役場でも作成が可能です。

公正証書発行に必要となるものは、

  • 身分証明書(運転免許書・パスポート等)
  • 印鑑または各人の印鑑証明書と実印
  • 事前に作成した養育費に関する書類

原則として、本人が公証役場に行く必要がありますが、弁護士などの代理人を立てることも可能です。

提出された書類は、公証役場の職員が確認後、問題がなければ「債務者は、本公正証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行を受けるべき事を認諾する」という文言が明記されます。

【公正証書の記入例】

甲(養育費を支払う側)は乙(養育費を受け取る側)に対し、丙(支払い対象となる子供)の養育費として平成〇年〇月から、丙が成年に達する日の属する月まで、毎月〇万円ずつ、毎月末日限り、丙名義の口座に振り込み送金して支払う。物価の変動等による事情により養育費に変更が生じる場合には、甲乙の協議により減額できるものとする。

作成する上での注意点としては、

  • 誰から誰に対する支払いなのか
  • 支払期間はいつからいつまでなのか
  • 受け渡し方法
  • その他、お互いが合意した事項

について漏れなく記載しておかなければなりません。

協議離婚できない場合は「調停」を利用する

当事者同士の話し合いでは養育費の取り決めが合意できない場合、家庭裁判所への離婚調停の申立てをすることになります。

申立に必要な書類は以下のものです。

  • 調停申立書・付属書類
  • 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)

また、養育費に関する取り決めもおこなう場合には、「それぞれの源泉徴収・確定申告書」も必要になります。

調停では、「男女各1名ずつの調停委員」が当事者それぞれの言い分や事情を聞いて問題点を整理し、合意点を探っていきます。

調停は当事者が出廷しますが、調停室で調停委員を通して話し合いをするため、お互いに顔を合わせることはありません。

調停で合意すれば調停調書が作成される

調停によってお互いが離婚条件に合意することができれば、離婚成立となり調停は終了します。

調停が終了すると、裁判の判決と同じ効力を持つ「調停調書」が作成されます。なお、調停調書に記載されている内容は、原則として変更することはできません。

もし相手が養育費を支払わない場合、家庭裁判所に「履行勧告」を申し立てることができます。調停調書があれば、履行勧告に費用は掛かりません。

それでも相手が支払いに応じない時には、地方裁判所に申し立てをして、強制執行で養育費を回収することになるでしょう。

いったん決めた養育費を増額することは不可能?

離婚後に、様々な要因で養育する環境が変化することは十分にあり得る話です。

たとえば、以下のようなケースです。

  • 子供が大きな病気になり医療費がかかる
  • 費が高い私立学校に進学することになった
  • 権利者が失業や転職で収入が大きく減った
  • 義務者の年収が大幅にあがった

このような場合、養育費を増額することができます。

また、子供の年齢が上がっていけば、その分に応じた増額も可能です。

当事者による話し合いで合意できれば一番ですが、実際はうまくいかないケースがほとんどです。

話し合いで合意できない場合、家庭裁判所に「養育費増額請求の調停」を申し立てることになります。

養育費増額請求の調停では、上記のような状況の変化を考慮して、一度取り決めた養育費を妥当な金額に決め直すことができます。

養育費を減額するケースもある

離婚後に状況の変化があれば、養育費を減額するケースもあり得ます。

養育費を支払う側の病気や転職・失業による収入低下など、やむをえない事情では養育費を減額する必要があります。

その際も口約束ではなく「養育費減額請求の調停」を申し立てることで、裁判所が妥当な金額を決定してくれます。

調停では、相手の環境が改善された場合、養育費の額を元に戻してもらうことも約束しておくべきでしょう。

別居期間中も養育費について

養育費は原則として、離婚が確定した後に支払われることになります。

しかし、最近では様々な事情からすぐに離婚をせず、別居をするケースも多くなっています。

別居期間中も養育費をもらうことはできないのでしょうか。

別居期間が長い場合、過去の養育費を請求できる

離婚前の別居期間が長く、「権利者のみ」が子供の養育費を負担していた場合は、後から「過去の養育費」も請求することが可能です。

しかし、別居中の生活費(婚姻費用)を受け取っていれば、後から別居期間中の養育費を請求することはできないでしょう。

ただし、別居中の生活費(婚姻費用)が足りなかった場合などは、後から不足分を請求できる可能性はあります。

そのため、「どれくらいの婚姻費用を受け取っていたのか」しっかりと記録しておくべきです。

別居期間が長くなれば額も大きくなるので、「養育費減額請求の調停」を利用して請求する必要がありますが、一般的な「養育費請求」とは異なるため事前に弁護士に相談してください。

養育費の増額を望むなら弁護士への相談が解決の近道

養育費をお互いの話し合いで解決できれば面倒な手続きはいりません。

しかし、養育費の額についてスムーズに合意できるケースはほとんどありません。

また、支払いの取り決めをしても、約8割もの人が養育費を払ってもらえないという状況があるのです。

養育費をきちんと支払ってもらうためには、調停や強制執行といった「法的手続き」が必要になります。

しかし、こうした手続きをすべて自分でおこなうのは簡単なことではありません。

弁護士なら養育費に関するあらゆる問題をサポートできる

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協議離婚・離婚調停の代理人はもちろん、強制執行や裁判の手続き、さらには権利者の精神的サポートまで、あらゆることに対応することが可能です。

弁護士に依頼したことで「養育費を増額できた」というケースも非常に多くなっています。

養育費は子供の生活レベルに直結する問題です。「十分な養育費が支払われない」「支払いが滞っている」という場合、犠牲になるのは子供自身なのです。

いち早く解決するためには、離婚問題に強い弁護士に相談することが一番です。

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