離婚と別居の注意点(生活費、養育費、子ども、親権)を解説

『離婚』という二文字が頭に浮かべばひとつ屋根の下で一緒に暮らすことが窮屈に感じるかもしれません。そんな時、別居を決意して夫婦別々に暮らすことを選択するケースもあります。

この別居で気を付けたいのが感情的になって勝手に家を出て行くことです。離婚を前提に別居するのであれば、あくまで「離婚協議」というものを考えた上で行動に移さねばなりません。

「私は子どもを連れて別居します!」と自分から一方的に主張して家を飛び出せば、婚姻費用(生活費)、慰謝料、親権、養育費、財産分与を協議する際に不利になる例が少なくありません。

離婚を前提に別居を決意するなら、後で不利にならないような別居の手順を踏まえて行動に移しましょう。ここでは、別居する際の注意点について解説します。

離婚する際の別居するメリット

離婚したいと考えている人にとっての「別居」のメリットは、「離婚できる可能性が高くなる」ということです。離婚するには離婚原因が必要であり、法律上の離婚原因には主に5項目が定められています。

その中の一つ民法第770条第1項5号では「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」と定められており、一般的に長期間別居状態が続いているケースでは「夫婦関係が破綻しており、回復の見込みがない」と判断されて離婚が認められる可能性が高いです。

また、絶対離婚すると決意している人は離婚までの間ひとつ屋根の下で生活を共にすることで、精神的な負担を強いられることになり、精神を病んでうつ病を発症するようなケースも少なくありません。

別居することでストレスからも解放されることになり、お互いに冷静に物事を考えることができますので、これまでの夫婦問題を客観的に見られるようになります。ただし、子供を持つ家庭の場合は、「環境変化に伴って不安を感じる子」や「母親の安定からイキイキと生活する子」に分かれますので、子供のメンタル面を第一に考える必要があります。

離婚で不利にならない別居のポイント

離婚前に別居する際に気をつけるべきポイントは以下のようになります。

  • 親権を得たいのであれば子供も連れて行く
  • 別居中の生活費を事前に話し合う(婚姻費用)
  • 相手の同意を得てから別居する
  • 別居する理由、原因を相手へ明確に伝える
  • できれば専門家(弁護士)に事前に相談する

これらをクリアしたうえで別居しなければ養育費や慰謝料、親権を協議する際に不利な立場となってしまう恐れがあります。

別居中はあくまで婚姻関係が続いている訳ですから、家庭を放棄したと判断されるような行動をとるのは厳禁です。離婚においてあなたが相手に何も望まないのであれば今すぐに家を飛び出しても良いでしょう。

しかしながら、養育費や慰謝料、親権を獲得したいのであれば上記の条件を満たしたうえで別居する必要があります。

別居しているが離婚したくない時の対応方法

夫婦関係修復のために冷却期間が必要だと思ったことが別居を選択したキッカケということもあるでしょう。物理的な距離を置くことで、気持ちが安定することもありますが、「別居した夫婦の7割以上が離婚している」という現実があり、別居期間が長くなるほど離婚率が高くなってしまいます。

別居さえすれば、そのうち向こうから頭を下げてくるだろうと考えている人も少なくないと思いますが現実は違います。別居状態から関係修復し復縁するためには、別居の原因は何であったのか、その理由を考え、まずは自分自身が反省する必要がります。

そして、適度に連絡を取りながら、タイミングを見計らって話し合いをし、復縁するメリットをアピールすることが大切です。もし、すぐには話し合いに応じてくれないようであれば、相手が突発的に離婚届けを出さないように「離婚届不受理申出」を行っておくことも対策と言えます。

自ら別居しても理由がモラハラ、DVなら離婚で不利にならない

別居理由が、あくまで相手側に問題があるならば自ら家を出たことで必ずしも不利にはなりません。特にDV、子供の虐待のように身の危険が迫っているようなケースはなおさらです。

また、相手との話し合いが不可能だったり、不調に終わるようなケースで家を出た場合には、必ずしも不利になる訳ではありません。この有利・不利の線引きは個人の事情により違うため判断は難しくなっています。

ですので、離婚を前提とした別居を決意した際には事前に弁護士に相談しておくことが有効です。以下の様な問題において弁護士なら法的に適切な行動アドバイスをしてくれます。

  • 配偶者のDV、モラハラ、子供への虐待
  • 配偶者が精神疾患を持つ
  • 配偶者が薬物、アルコール依存などにより冷静に話し合いができない
  • 配偶者の親族(姑)や第三者の介入により話し合いが難航

別居の期間と慰謝料の関係

別居期間は慰謝料を決定する判断材料とされています。「慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償」を求めるものですので、別居期間が長くなると、精神的苦痛の度合いが大きくなり、慰謝料の額も大きくなります。

ただし、民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。民法第752条は、夫婦の「同居義務」「協力義務」「扶助義務」についての規定ですが、離婚を前提で長期間別居した場合、「悪意の遺棄」と判断されることもあります。

悪意の遺棄とは、夫婦関係が破綻してもいいという意思がある場合、あるいは破綻をもくろんでいる場合がこれに当たります。夫婦関係を修復するための冷却期間としての別居ではない場合は慰謝料請求が不利になる可能性もありますので注意が必要です。

別居時の婚姻費用

婚姻費用とは別居時に必要な生活費や養育費のことです。この婚姻費用は、たとえ別居しても離婚していなければ配偶者はこれまでどおり支払う義務があります。そして、別居期間中の配偶者の婚姻費用の未払いがあれば離婚前でも離婚後でも請求することが可能です。

別居時の婚姻費用については当事者同士の話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所を介して調停や審判により婚姻費用を請求することができます。

裁判の場合、婚姻費用を請求できるかは『別居の理由が正当であるか否か』が重視されます。「生理的に合わないから別居した」「気晴らしに離れて暮らしたい」など、裁判官が不当だと判断する理由で別居した場合には婚姻費用は認められないでしょう。

裁判所で離婚調停をおこなう場合には、「なぜ別居が必要なのか」「婚姻費用の必要性」を明確にしておかなければなりません。ここでも弁護士のアドバイスが有効です。

婚姻費用の算出方法と相場

婚姻費用の算出方法は以下の情報をもとに算出されます。また、裁判所が作成した相場となる婚姻費用算定表というものがありますので、これを一つの目安とします。

  • 夫婦の資産
  • 支払う側の収入(年収)
  • 受け取る側の収入(年収)
  • 子供の人数、年齢
  • 月の生活費(収入、支出)
  • 別居の期間

妻が婚姻費用の請求をしても「夫が支払いに応じない」、「金額が少ない」など納得出来ない場合には、裁判所で調停をおこなうことになります。そこで、上記の情報により婚姻費用が算出されることになります。

そこで調停が不調に終わった際には審判となります。審判とは裁判官がこれまで調停を進める中で得た情報や本人からの聞取りなどをもとに裁判官が婚姻費用の金額を決めることです。

この審判を受けたら配偶者は支払いに応じなくてはなりません。

いずれにしても、別居中に婚姻費用を請求する際には離婚を前提とするケースが多く、離婚慰謝料や養育費、財産分与なども合わせて請求するケースが一般的です。

その場合は弁護士に相談の上、できるだけ有利な離婚と慰謝料増額を目指して行くのが賢明な判断と言えるでしょう。

別居中の生活費・養育費の相場は?

別居中の生活費・養育費は「婚姻費用」として請求することができます。婚姻費用とは、家族関係にあるものが通常の社会生活を維持するために必要な費用のことを指しますが、具体的には生活費や居住費、子供に係る生活費や学費等の養育費などの費用です。

婚姻費用は話し合いで自由に決めることができますが、調停や裁判では一般的に婚姻費用算定表に基づいて金額が決定されることが多いです。

例として、2歳の子どもが1人、支払う側の年収が500万円、受け取る側の年収が0円の場合、相場は4~6万円程度となります。子どもが5歳で、支払う側の年収が540万円、権利者の年収が100万円の場合、相場は6~8万円程度となります。

共働きの場合は生活費はどうなるのか

共働きの場合でも、請求する側より相手の収入が高い場合、婚姻費用を請求することができます。具体的な生活費の金額は、お互いの収入や経済状況、子供の数、年齢などの事情によって変わってきます。

請求する側に十分な収入がある場合や相手より収入が多い場合は、請求できないケースもありますが、なにか特別な事情がある場合は、婚姻費用算定表の範囲内で請求することができます。

別居中に相手が生活費・養育費を払わない時はどうすればいいか

婚姻費用は、配偶者は相手方に対し、同一の生活を維持する義務がありますので、別居理由にかかわらず請求することができます。しかし、婚姻費用を請求しても相手がそれに応じず、生活費・養育費の支払いを受けられないこともあります。

相手が生活費・養育費を払わない場合は「婚姻費用分担請求調停」を申し立てることになります。婚姻費用分担請求調停は、裁判所が対立する両者の間に入り、当事者双方の一切の事情を聴取したり、必要書類等の提出を受けたりして、解決に向けた助言をすることです。

たとえ婚姻費用分担請求調停では話し合いがまとまらず、調停不成立となった場合でも自動的に審判手続きが開始されることになり、裁判官が強制力のある判決を下すことになります。

別居中の家賃はどうなる

別居中の家賃も婚姻費用として、別居理由にかかわらず請求することができます。この場合も、相手が支払いに応じない場合は婚姻費用分担請求の調停を提起する必要があります。

別居にかかる費用には、月々の家賃以外にも、引っ越し代や初期費用、光熱費が必要になりますが、これらは婚姻費用で認められる範囲内ということになります。

また、一方的な理由で家を出て行った場合、一般的には別居中の家賃を請求することが難しくなってしまいますので注意が必要です。

別居中に夫(妻)の浮気相手へ慰謝料請求できるか

別居中に夫(妻)が浮気(不貞行為)をした場合、浮気相手には「貞操権」を侵害し婚姻関係を破綻させられたことに対する慰謝料を請求することができます。貞操権とは、夫婦が異性関係の正しさを保持する権利のことです。

浮気による慰謝料は、不貞行為を行った夫(妻)と貞操権を侵害した浮気相手の両方に請求することができます。浮気相手への慰謝料請求の額はどちらが浮気に積極的であったかによって決められます。

民法第719条では、浮気による賠償責任は「不真正連帯債務(連帯責任)」であると定められていますので、夫(妻)が賠償額全額を負担した場合は浮気相手には1円たりとも請求できません。

子どもを連れて別居すると親権は有利になるのか

子供の養育というものを考えた場合、子供の年齢が幼ければ幼いほど母親側が養育するのが一般的です。ですので、別居の際には母親が子供を引き連れていくのは自然な流れです。

ここで子供を連れていくことに配偶者が納得すれば良いのですが、当事者同士の話し合いで解決しない場合には家庭裁判所を介して調停する必要があります。別居時の子育てをどちらが受け持つのかを決定するためです。

裁判所の基準では子供の年齢が成人に近ければ近いほど現状を維持する傾向にあります。ですので、離婚後の親権獲得を考えた場合に子供を置いて別居するのは得策ではありません。

相手の同意を得ることはもちろん必要で子供の意思というものも尊重しなくてはなりません。子供が「付いて行く」と言えば子供の主張を尊厳するのが法律の観点であり福祉の観点です。

一般的に裁判所では、子供の成長に悪影響を及ぼすような家庭環境にある場合は、別居したほうが子供にとって良いと考えられています。ですので、親権を望むのであれば、離婚前に子供を連れて別居し、子供との生活を継続したほうが有利です。

前述のように子供が幼くて自分の意思表示ができない場合には「現状維持」が前提となります。なお、子供が15歳以上の場合は、子供の意見も反映されることになります。

離婚前の財産の扱いは?

法律上、夫婦が婚姻期間中に築いた不動産や自動車、預貯金などの財産は夫婦二人で分与することと定義されています。これを「清算的財産分与」と言い、配分は「貢献度」によって決められることになります。

たとえ夫の収入だけで購入した場合も、夫婦の協力があってこそ得たものであると判断されれば財産分与の対象となります。このため、収入ゼロの専業主婦でも財産分与を受けることができます。

ただし、離婚前に別居している場合、財産が増減している可能性があることから、裁判例において清算的財産分与の扱い方が別居時までとされるケースと離婚時までとされるケースの二手に分かれます。詳細については個々の事情に応じて判断されることになります。

離婚後の財産分与はどうなる

財産分与は婚姻関係の有無や離婚理由に左右されることはありません。婚姻期間中に夫婦で協力して形成した財産については、その名義にかかわらず共有財産と考えられていますので、離婚後でも財産分与を請求することができます。

ただし、財産分与は2年という除斥期間(じょせききかん)が定められていますので、離婚後2年を経過すると財産分与を請求できる権利が消滅してしまいます。

離婚を前提にした別居の仕方

離婚を前提に別居する場合には、「理由」と「原因」を明確にし、相手の同意を得て「対策」と「準備」を怠らないことです。

離婚の条件を協議する際に「勝手に家を飛び出した」とか「家庭や子育てを放棄した」というような自分に不利な状況を作り出さないためです。

  • 『理由』…なぜ?別居しなければならないのか。
  • 『原因』…誰が?何を?どうした?から別居の必要がある。
  • 『対策』…慰謝料、養育費、親権を考慮した行動をとる。
  • 『準備』…協議離婚、調停に関する準備を進めておく。(弁護士へ相談)

繰り返しますが、離婚を前提とした別居では「理由」「原因」「別居に対する相手の同意」を忘れてはいけません。別居は相手とトラブルになる可能性がありますので、弁護士に積極的に相談してより良い解決を目指すべきです。

別居前に弁護士に相談しておきたいポイント

別居時において問題になるのが別居中の生活費や子供の養育費など、夫婦が負担すべく「婚姻費用」です。別居期間は、金銭的な問題が多く発生しますが、問題はこれだけではありません。別居期間中には配偶者の「異性関係」「預貯金の移し替え」「財産の処分」などにも注意が必要ですし、勝手な行動をさせないために対策も必要になります。

また、別居前に特に注意すべきことは、夫婦の「同居義務違反」に該当しないかということです。法律では夫婦は同居義務が定められており、仕事や入院など特別な理由がない限りは勝手に家を出るのは違反行為にあたります。

別居前に弁護士に相談しておくことは、自分の目的に対し有利な条件を作り出すことはもちろん、失敗を避けることにもつながりますので、早めに相談しておくのが得策です。

別居後に弁護士に相談するべきポイント

離婚したい、有利な条件にしたいと考えている人にとって、別居後の別居期間中は、離婚問題をはじめ、慰謝料、親権、養育費、財産分与など金銭面において、主導権を握り有利に進めるための準備期間でもあります。

離婚して新な生活をスタートするためには、離婚を考えるきっかけや別居に至る経緯、現在の状況などに加え、養育費や慰謝料を多くとりたい、浮気相手にも慰謝料を請求したいなど、自分がどのような方向で行きたいのかという目的を弁護士に相談しておくことが大切です。

また、別居しているけど離婚したくないという人は、復縁後の生活が充実するように、どのように対処すべきなのか理想的な復縁方法について相談しておくことが大切です。

別居とはある意味、離婚するまでの猶予期間とも言えます。そのため離婚後の生活というものを考えていかなくてはなりません。一人親となった時のことを考えて「子育て支援制度」「一人親に対する援助」「職業支援」などリサーチして準備しておくことも重要です。

有利な別居、婚姻費用、養育費の支払いなどを考えた場合に、別居する前から離婚専門の弁護士に相談しておけば役立つアドバイスをもらうことができます。

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