配偶者が精神病で離婚はできるのか?

配偶者が記憶障害や双極性障害(躁うつ病)など重度の精神病になってしまった場合、婚姻生活を継続することが難しくなることがあります。配偶者が重い精神病である場合、裁判で離婚が認められる可能性があります。

ただし、精神病であれば必ず離婚が認められるというわけではなく、一定の要件を満たす場合のみ離婚が成立します。

この記事では、配偶者の精神病を理由として離婚が認められる基準について解説していきます。

精神病を理由に離婚するには裁判離婚が必要

当事者同士の話し合いをもって成立するのが「協議離婚」で、当事者同士の離婚協議が不成立となった場合などに第三者による調停で離婚する「調停離婚」です。協議離婚と調停離婚では、裁判上必要となる「離婚原因」は不要です。

配偶者が精神病であっても協議や調停で相手が離婚に応じてくれれば、離婚する理由を問わず離婚することができます。しかし、配偶者が重い精神病となり離婚に対する判断能力を喪失している場合や意思表示ができない場合は、本人の意思がなければ成立しない協議や調停で離婚することはできません。

このため、配偶者が重い精神病で離婚するためには、裁判離婚により法的に離婚が認められる必要があります。

精神病を理由とする場合ははじめから裁判を起こせる

離婚調停が不成立で終了した場合に、はじめて夫婦の一方は家庭裁判所に離婚の訴えを起こすことができます。これが一般的な「裁判離婚」の流れですが、例外として、「被告が心神喪失などの状態」の場合は、調停を行わず離婚訴訟の訴えを起こすことができるとされています。

つまり、配偶者が精神病で心神喪失状態にある場合は、はじめから離婚訴訟を申し立てることが認められています。

離婚が認められる5つの理由

調停をはじめその流れで行われる審判とは違い、裁判の場合、民法に定める離婚原因がない限り、離婚は認められません。

裁判を起こすには以下の5つのうちいずれかの離婚原因が必要となります。

『離婚原因となる5項目(民法770条第1項)』

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  5. その他婚姻を継続しがたい重大な事由のあるとき

精神病で離婚が認められるのは、4の「配偶者が強度の精神病にかかり、回復する見込みのないとき」が離婚原因であることが通例です。

しかし、精神病を理由に離婚が認められるケースでは、5の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由のあるとき」に該当することもあります。

民法で配偶者が精神病の場合に離婚が認められている理由

民法では、配偶者の浮気や暴力、借金、不労など、婚姻関係にある相手に社会的な問題があり、それが家庭にも影響を及ぼすことが離婚を成立させる要素となりますが、精神病は本人に責任がないことも多くあります。

法的に夫婦には扶助義務(夫婦がお互いに支えあう義務)があります。本人に責任がない精神病であっても離婚が認められる要因として、離婚に定義される「夫婦関係が破綻し、夫婦関係を維持していくことが困難」に該当することがあるからです。

多くの場合は、配偶者が精神病になると苦労を強いられるのは夫婦の一方です。このため、民法では、配偶者が強度の精神病にかかり、この先回復が見込めない場合は、婚姻関係の継続を求めることは適切ではないという判断ですので、精神病による離婚を認めているのです。ただし、法律上の離婚原因に該当する病気さえあれば、ただちに離婚が認められるというわけではありません。

精神病を理由に離婚を成立するためには、あくまで配偶者が「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」ということが重要なポイントとなります。

離婚原因として認められる精神病の種類

  • 躁鬱病
  • 偏執病
  • 早期性痴ほう症
  • まひ性痴ほう症
  • 初老期精神病

離婚原因と認められない病気

  • アルコール中毒
  • 薬物(ドラッグ)中毒
  • ヒステリー症
  • ノイローゼ

精神の病気ではないが認められる可能性がある

  • 不治の病
  • 身体障害

「強度の精神病にかかり回復の見込みがない」とはどういう意味?

精神病で離婚できるかどうかは「回復の見込みがない」どうかが争点になります。精神病の症状を判断するのが医師の所見です。

精神病の種類や症状の重さ、医師の所見が考慮される

民法770条第1項第4号では「早期性痴呆」「麻痺性痴呆」「躁鬱病(双極性障害)」「偏執病」「初老期精神病」などが、強度の精神病にかかり、回復の見込みがない精神病に該当します。これらの病気があることを医師の診断によって証明することで裁判所の判断は大きく影響を受けます。

ただし、強度の精神病であることと「回復の見込みがない」ことが条件ですので、精神病の症状がどの程度の期間継続しているのか、精神病の症状が一定期間以上続くかなど、回復困難であることを医学的所見によって証明しなくてはいけません。

また、認知症やヒステリー、ノイローゼ、アルコール依存症、薬物中毒などは強度の精神病に該当しませんが、これらが原因でも民法770条第1項第5項に基づく「婚姻破綻による離婚」が認められる可能性があります。

医学的な判断だけでは決定打にはならない!

医学的に精神病であるという判断がなければ裁判で離婚が認められることが難しくなってしまいますので、医学的所見があるか否かは重要です。

しかし、医学的所見として重度の精神病がなくても民法770条第1項第5号に該当するケースでは強度の精神病でなくても離婚が認められることもありますし、反対に医学的所見があっても、それだけでは離婚が認められないこともあります。

夫婦関係を破綻させる程の精神病の判断で重視されるポイント

裁判官は夫婦関係を破綻させる程の精神病であるか否かを重視しますので、重度の精神病であり回復が困難であるという医師の診断結果は非常に重要ですが、医学的所見以外にも、様々な事情を考慮した上で判断をします。

民法770条第2項では、「裁判所は、前項(民法770条第1項)第一号から第四号までに掲げる事由(離婚原因)がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。」と定められています。

これに基づいて、たとえ配偶者が医学的に重度の精神病であると判断された場合でも、次の要件を満たしていないと離婚が認められないこともあります。

夫婦関係を破綻させるほど重度の精神病であるか

裁判官は、夫婦の一方が精神病になったことで、正常な婚姻共同生活の維持を期待できない状態に陥っているか否かを判断基準としていますので、精神病を理由に離婚を成立させるためには「夫婦関係を破綻させる程の精神病」であるか否かが重要となります。

夫婦関係の破綻とは、一般に夫婦双方が相手への気持ちを失い、やり直す気持ちを失っている場合を指しますが、精神病の場合は、婚姻生活を維持することが期待できない状態に陥るほど強度の精神病になっているか否かで判断されます。

これまで精神病の治療に尽力してきたか

回復が困難である精神病であることを理由に離婚を認めてもらうためには、婚姻生活で精神病である配偶者の治療に尽力してきたかという点が非常に重視されます。

この点に関しては、精神病の治療のために専門的な医療機関から必要な治療を受けたり、薬を試したり、配偶者と共に闘病生活を続けてきた経緯が考慮されます。

配偶者の精神病の治療に尽力してきたにも関わらず回復の兆しがない場合は、回復が見込めない精神病であると認定される可能性は高いです。

今後の事情も大きく考慮して判断される

これまでの裁判例では、離婚後、配偶者に生活基盤が整っているか否かも重要視されています。

例として、離婚後に配偶者が入院加療をできる施設の手配や、この先の生活に必要な費用の送金など、離婚後も配偶者を可能な限り支援をしていく姿勢・意思を示しているかという事情が考慮されることになります。

このため、可能な限りの手を尽くして、配偶者が離婚後も生活できるように生活の見通しを持たせられるよう尽力する必要があります。離婚後も配偶者が日常生活を送ることができるよう、配偶者の父母や親戚、子供などに頼んで、親族による看病・援助の体制を整えておくというのも有効な手段です。

精神病で離婚を考えている方は弁護士へ相談を

離婚裁判を起こす場合、訴状や必要な資料を作成する段階から法律の専門知識が必要になります。また、精神病(躁うつ病)を理由に離婚を成立させるためには、裁判所に認めさせるための、精神的苦痛、実害、具体的な証拠、などを説明する資料作成とそれを正確に伝える力も必要です。

そのため、精神病を理由に離婚をしたいならば、弁護士に相談の上、離婚手続きを進めていくのが適切な対応と言えます。精神病を離婚理由にするためには裁判の手続きも必要になるため時間もかかります。

そのため、離婚の悩みを抱えたら、できるだけ早い段階から弁護士に相談することをお勧めします。

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