事実婚(内縁関係)の解消で揉めたときの対応方法

事実婚(内縁関係)を解消するときには、別れ方を決めるために話し合いが必要になります。その際に2人だけで話し合おうとしても「相手が別れてくれない」「不貞行為を認めない」「共有財産をくれない」などで揉めるケースがよくあります。

また、相手の同意を得ないまま一方的に事実婚を解消しようとしてトラブルに発展することもあります。事実婚を解消するときには弁護士のような専門家に相談して手続きを進めた方が良い場合もあります。

事実婚と法律婚の違いや権利、解消の話し合いで揉めたときの対応方法について解説します。

事実婚(内縁関係)とは

事実婚(内縁関係)とは、法律上で婚姻関係を結ばないまま夫婦として生活することです。役所には婚姻届を提出していないので法律上で婚姻した「法律婚」ではないのですが、事実上では男女お互いが婚姻関係である意思をもって夫婦生活を営むことを「事実婚(内縁関係)」と言います。

「結婚に対する意識の変化」「ライフスタイルの変化」により婚姻関係を選択する男女は増えています。

実際に総務省統計研究所が発表した『「非親族の男女の同居」の最近の状況(2010年)』を見てみると、2000年から2010年にかけて親族関係にない者同士の男女2人が未婚で同居する数字は増えており、2000年の24万5000組から2010年には46万組に増加しています。

事実婚は婚姻届を提出していないため法律上の婚姻とみなされませんが、実は法律婚と同じように夫婦としての権利や義務が発生します。

事実婚の権利・義務は法律婚と同じである

事実婚(内縁関係)は同棲と違って法律婚と同じように夫婦としての権利や義務が生まれます。なぜなら、お互いに夫婦であるという意思があり、生計が同じであったり財産を共有したりして法律婚と同じように夫婦生活を営んでいるためです。

事実婚か同棲かの線引きは難しい面がありますが、例えば週末だけの同居や夫婦であるという意思のない同居は事実婚(内縁関係)の定義には入りません。

事実婚での権利や義務は下記の通りです。

1. 財産分与を請求できる権利

婚姻生活中に築いた共有財産は、事実婚解消後に財産の分与として請求できます。

2. 年金分配を請求できる権利

事実婚解消後に、年金の分割を請求できます。

3. 損害賠償(慰謝料)を請求できる権利

相手に事実婚が破たんする責任がある場合は、損害賠償(慰謝料)を請求できます。

4. 婚姻費用を分担する義務

生活費や子どもの養育費、医療費といった婚姻費用を分担します。

5. 扶養義務

法律婚と同じように、事実婚でも扶養の義務があります。

6. 貞操義務

性的な純潔を守る義務で、浮気や不倫などの不貞行為は事実婚でも認められません。

7. 同居・協力義務

事実婚でも法律婚でも、夫婦は同居してお互い協力扶助をしなければならず、転勤や病気療養などの正当な理由がない限り別居は認められません。事実婚を解消したいのに相手が別れてくれないからといって、一方的に家から出ていくことは同居義務を犯してしまう行為となります。

8. 日常家事債務の連帯責任の義務

「日常家事債務」とは、婚姻生活するうえで必要なものを購入したときの債務です。そして夫婦ならば、夫もしくは妻のどちらか一方の契約でも連帯責任が発生します。ただし、他方に責任を負わないことを予告した場合は連帯責任が生まれません。

このように、事実婚でも法律婚と同じように婚姻生活を送っていれば夫婦としての権利・義務が発生します。

事実婚と法律婚の違いとは

事実婚と法律婚との違いは下記の点が挙げられます。

1. 相続人になれない可能性がある

法律上の婚姻をしていないため、法定相続が発生しません。つまり法律上では婚姻と定義されないため相続権がない形になります。ただし、遺言状などによって相続が発生する場合もあります。

2. 子どもの親権者はどちらか一方になる

事実婚で子どもが生まれた場合、法律婚とは違い父母の共同親権ではありません。そのため法的には父親が存在しない状態となるので、子どもは「非嫡出子」となり母親が親権者となります。夫が子どもの父親となる場合は認知の手続が必要です。

また、親権はどちらか一方でも事実婚になると母子手当(児童扶養手当)は受けられません。事実婚のまま母子手当を受給していると不当とみなされて返還を求められますので注意しましょう。

3. 夫婦が別姓のままでいられる

法律婚とは違い、女性は姓を変える必要がありません。事実婚の場合法律婚と同じ義務や権利はありますが、一方で入籍をしていないため法定相続や父子の親権といった法的な繋がりのないことが大きな違いと言えるでしょう。

事実婚の解消には法的手続は不要

事実婚は婚姻届けを提出していないので、一緒に暮らしていても戸籍上では別々です。そのため住居が変わるときには住民票の変更が必要ですが、法律婚のように離婚の法的手続は必要ありません。

事実婚の解消で揉めるケース

事実婚を解消しようとするとき、様々な理由で揉めることがあります。例えば「慰謝料が欲しい」「共有財産を分与したい」「養育費が欲しい」といったときに、果たしてお互いの関係は本当に夫婦関係だったのか、子どもがいる場合はきちんと親子関係があるのかといった点が争点になる場合が多く見られます。

事実婚の解消でトラブルが多いのは以下のようなケースです。

1. 慰謝料

事実婚でも「DV」「モラハラ」「浮気」「性交渉」など相手が一方的に関係を悪化させるケースがあります。事実婚の解消の原因を作った相手に対して慰謝料請求をすることができます。相手に夫婦関係が続けられない責任がある場合、事実婚でも慰謝料の請求が認められており、慰謝料相場も法律婚とほぼ同額になります。

2. 浮気(不貞行為)

「事実婚は恋人同士の関係と同じだ」と思って浮気(不貞行為)をしても構わないと勘違いしている方が数多くいます。また、浮気をされても泣き寝入りしてしまうケースもあります。浮気(不貞行為)は、事実婚でも認められません。法律婚と同じように貞操義務の違反とみなされます。

3. 財産分与

財産分与をする際、相手側が共有財産だと認めず自分の特有財産だと主張するケースがあります。事実婚でも、夫婦の間で築いた共有財産は財産分与を請求できますが、事実婚の期間を明確にできないとトラブルに発展する可能性があります。

4. 養育費

養育費は事実婚でできた子どもであっても受け取る権利があります。事実婚の関係が解消したときには子どもの養育費を請求できます。

この場合、夫が子どもを認知するというのが大前提です。子どもを認知しないと父子関係にならないので、夫が認知を拒否すると夫へ養育費の請求は難しくなる可能性があります。

5. 親権

夫が子どもの親権を持ちたくても、子どもは非嫡出子なので親権は母親にあります。また認知の届出だけでは親権は母親のままです。夫が親権を勝ち取りたいときは、養子縁組を成立させる必要があります。

6. 婚姻費用

「夫が生活費を払ってくれない」「子どもの医療費を分担してくれなかった」といった事実婚中の婚姻費用は、関係を解消したときに請求できます。ただし、法律婚とは違って事実婚の場合別居中の婚姻費用は事実婚の関係が解消されたとみなされてしまうため、請求が難しくなる可能性があります。

7. 年金分割

年金分割は事実婚の場合、法律婚と違って婚姻期間が明確でないため認められていません。年金分割を請求したい場合は、第3号被保険者の手続が必要です。

また、事実婚の場合には別居していた期間は年金分割の対象とならないので注意が必要です。

8.子どもの認知

事実婚の子どもは非嫡出子で夫と親子関係ではないため、「父親の相続人になれない」「父親に扶養の請求ができない」といったトラブルがあります。夫が法律上で父親とみなされるためには認知届を提出しなければなりません。

9. 面会交流

親権者から面会交流を一方的に拒否されるケースがあります。事実婚を解消するときにも法律婚と同じように面会交流について取り決めた合意書を作成しておくとトラブルを回避しやすくなります。

関係解消の話し合いがうまくいかない場合にはどうする

事実婚の場合は、法律上での婚姻と定義されていないので離婚届を提出しなくても婚姻関係を解消できます。しかし、お互いの合意により事実婚を開始したのですから、婚姻を解消するときもお互いの合意が必要です。

ここで法律婚と同じように、離婚の条件についての話し合いが必要になりますが、「話し合いが進まない」「相手が条件に応じない」などの問題が出てくることがあります。

その場合には、交渉を弁護士に依頼する、裁判所で調停を行うことにより和解を進めなくてはなりません。

弁護士による和解交渉

夫婦間での話し合いが進まない場合は、弁護士を間に入れた和解交渉を行うと良いでしょう。相手が事実婚についての認識があいまいだと、請求をしても「婚姻関係ではない」と主張されてトラブルが大きくなる恐れもあります。

また、話し合いがこじれてお互いの関係が悪化してしまうと、裁判となっても解決が長引く恐れがあります。早めに弁護士に和解交渉を依頼することで早期解決を目指すのも対応方法の一つです。

内縁関係調整調停

事実婚での婚姻関係を解消したいときに、話し合いがうまくいかず別れてくれない場合は家庭裁判所に調停を申し立てて別れ方を決めることができます。この調停を「内縁関係調整調停」と言います。

内縁関係調整調停は、法律婚の夫婦が行う「夫婦関係調整調停」と同じです。

裁判

内縁関係調整調停を申し立てる先は、相手方の住所を管轄する家庭裁判所となります。また、慰謝料を請求する場合に申し立てる先は地方裁判所となり、家庭裁判所ではありません。慰謝料の請求は内縁関係調整調停の申し立てとは違うので注意しましょう。

調停の際には事実婚の開始日が分かる証拠が必要

まず調停を行うときには事実婚であることを認められなければなりません。事実婚の期間が大切になるため事実婚を開始した日が分かる証拠が必要となります。

証拠となる資料には、以下のようなものが挙げられます。

1. 住民票

夫婦として生活する際、住民票を同一にして同じ場所に住んでいるかと思います。事実婚の場合、住民票の記載には「夫(未届)」「妻(未届)」、もしくは「同居人」と記載します。

住民票は、事実婚を証明する重要な資料となりますので「夫(未届)」「妻(未届)」と記載した方が法的権利などを主張する場合には有利になります。この住民票を提出した日が、事実婚の開始日としての証拠となります。

2. 事実婚に関する契約書(準婚姻契約書)

事実婚を証明する資料として契約書を作成しておくと有効です。この契約書を作成しておくと事実婚の開始日の証拠にもなります。

事実婚の解消で揉めたら弁護士に相談すること

もしも事実婚の関係にある人で「別れ方を決めたい」「相手が別れてくれない」「慰謝料請求したい」といった場合には、まず弁護士に相談することをおすすめします。

事実婚でも法律婚と同じように、慰謝料請求などの権利や夫婦としての義務が発生しますので「事実婚だから…」と泣き寝入りする必要はありません。

弁護士なら、相手方に対して法的根拠をもとに依頼者の主張を代弁してくれます。交渉の場に弁護士が出てくることで、相手方の態度が変わることもよくあります。

また、調停の場で揉めている場合にも調停委員に対して積極的に働きかけてくれます。調停や裁判を熟知しているため、有利な書類作成から交渉までをおこなってくれます。調停・裁判に発展するようなら弁護士に依頼するのが有効な方法です。

事実婚の解消を考えている、相手から解消を切り出されて困っているなど、事実婚のトラブルがあれば、離婚・男女問題に強い弁護士に相談しましょう。

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