離婚協議書を公正証書にする方法と手続き

協議離婚とは話し合いにより離婚問題を解決する方法ですが、この協議離婚で離婚する場合には離婚協議書という書類の作成は必ずおこなうべきです。

協議離婚で離婚する夫婦は全体の約8割ですが、その多くが離婚協議書を残さずに口約束だけで済ませたり、離婚協議書を作成しても弁護士など専門家のチェックを受けなかったり、公正証書化しないケースがほとんどです。

離婚問題では2つのトラブルがあると言われています。一つは離婚時に慰謝料や養育費の金額や親権を巡って揉めるケースです。もう一つは、離婚後に約束したはずの慰謝料や養育費が払われない約束不履行のケースです。

後者のようなトラブルに見舞われないためには離婚協議書を作成してそれを公正証書化するという手続きが重要になります。

離婚協議書のない離婚は問題だらけ

日本人の多くが協議離婚というものを簡単に考えてしまう傾向があり、離婚協議書を作成しないケースが多く見られます。協議離婚とは文字通り、離婚問題を協議することですが、この話し合いは現在の条件面だけでなく将来的なことも見据えて話し合いをして記録に残す必要があります。

なぜなら、慰謝料や養育費を支払う配偶者が必ず約束したことを履行するとは限らないからです。生活環境や経済状況が変わったことにより約束を守らないという契約不履行の問題は頻繁に起こっています。

もともとは支払うつもりだったのが予期せぬ出来事にみまわれたり、経済的に支払いが難しくなったために契約不履行するというケースが増えています。

例)

  • 再婚し子供ができた
  • ケガや病気による収入減
  • リストラや失業による収入減
  • 元配偶者の死亡
  • etc...

特に離婚後に養育費をもらう人や慰謝料を分割でもらう人など、離婚後も継続して相手から金銭を受け取る可能性がある人は、配偶者の生活状況が変わるかもしれないという前提に立って離婚協議書を作成する必要があります。

また、作成にあたっては素人判断で作らずに離婚専門弁護士に必ず確認して貰うことが、離婚後のトラブルを予防する重要なポイントです。

離婚協議書を公正証書にすべき理由

離婚協議書は弁護士監修のもとで作成することが重要ですが、さらにそれだけでなく公正証書にすることがもう一つのポイントです。

公正証書とは、法律の専門家である公証人が作成する公文書のことです。ちなみに、公証人は元裁判官、弁護士、司法書士など法律関係の仕事に従事してきた人たちです。

この公正証書は公文書のため高い証明力を有します。もし、養育費や慰謝料の不払いがあった場合に、この公正証書に慰謝料・養育費の支払い義務が書かれていた場合には、相手に対して訴訟(裁判)をおこすことなく強制執行という手続きで回収することができます。

特に、養育費など支払いが長期間におよぶものは、時間の経過とともに支払いへの意識が薄れていくため、より確実に回収できる道を離婚時に選択しておかなければなりません。それが「公正証書」というわけです。

離婚協議書を作成する際、「強制執行認諾約款」を含む公正証書を作成しておけば、相手の不払い時に即座に強制執行手続きに移ることができます。いちいち裁判をする必要がないため、不払い金を回収できる確率が上がります。

公正証書なら強制執行ができる

離婚協議書だけでは単なる約定を記した紙きれですが、公証役場で公正証書にすることで公文書という国が認めた書類に生まれ変わります。

公正証書は強制執行認諾約款を含むことによって、債務名義そのものとなります。つまり、法的効力を持った書面となるため、相手が不払いをした際に「給料を差し押さえる」、「所有財産を差し押さえる」など強制執行という強行手段を取ることができるのです。

ちなみに、給与を差し押さえる場合には手取り金額の4分の1までは毎月差し押さえることができ、養育費の場合には2分の1まで差し押さえることが可能です。

給料差し押さえの強制執行をおこなうには、まず公正証書を作成した公証役場で執行文という強制執行ができることを記述した文書を作成して、それを相手の職場に郵送してもらいます。以降は相手の職場から支払いがおこなわれることになります。(相手の職場と住所が判明していないとこの手続はおこなえませんので注意が必要です)

このように公正証書にしておくことにより法的に強い効力が発揮されますので、離婚協議書は必ず公正証書化しておく必要があります。

離婚協議書を公正証書にする方法

離婚協議書の作成

離婚協議書を作成する際には、まずは離婚協議をおこないますが、そこではお互いが納得できる条件となるように話し合いをおこない、それを離婚協議書に記していきます。これを公正証書する場合には双方が合意した内容でなければ公正証書化できませんのでしっかりと話し合いが必要です。

また、相手が「離婚協議を拒否して話し合いに応じない」、「公正証書の作成に応じない」というケースがよく見られますが、その場合には、弁護士を代理人として交渉を進めていくしか方法はありません。

公証役場での手続き

離婚協議書が作成できたら、次はそれを持って近くの公証役場へ行きます。(公証役場には事前に電話の上、予約が必要です)公証役場では離婚協議書を公証人にチェックしてもらい、法的な問題、合意内容に問題がないか確認してもらいます。担当の公証人から不足や不備、疑問点などの質問を受けますので簡潔に答えられるようにしておく必要があります。

また、ここで理解しておかなくてはならないのが、公証人の仕事はあくまで書かれた内容が、「夫婦で合意した事項か」、「法的に有効かどうか」、「誤りが無いか」を確認して作成するのが仕事です。書類に誤りがあったり夫婦で合意できていない事項があれば、公証人と何度もやり取りをしたり平日に何度も出向く必要がでてきますので注意が必要です。

そのため、離婚協議書の作成は不備がないように弁護士監修のもと作成するのが確実な方法です。

公証人との面談

公証人との面談は夫婦のどちらか1人でも構いません。その際に、離婚協議書と必要書類を持参します。また、役場によってはメールやFAX、郵送などを受け付けてくれる役場もありますので事前に確認しておけば何度も行く手間が省けます。

公証役場に持参するもの

公証役場の面談時に持参するものは以下の必要書類です。また、離婚協議書の内容によってはその他に持参が必要なケースがありますので、最寄りの公証役場に念のため確認しておきましょう。

  • 離婚協議書
  • それぞれの印鑑登録証明(3ヶ月以内)
  • 戸籍謄本 全部事項証明(3ヶ月以内)
  • 財産分与がある場合 例)不動産登記簿謄本、固定資産評価証明、住宅ローン・カーロン書類
  • 年金分割がある場合:それぞれの年金手帳

公正証書作成の手続きの注意点

面談後に公証人と修正のやり取りをおこない公正証書の最終案ができたら、公正証書の作成日を決めます。そして、作成日当日の公証役場には原則的に夫婦そろって役場に出向く必要があります。

しかし、理由次第では代理人に任せることも可能です。(ケガ、病気、遠方在住 など)その場合には、代理人への委任状が必要になります。委任状には不在者の印鑑登録証明と公正証書案に実印を押印したものが必要です。

委任状は各自治体の公証役場がテンプレートを用意しているので、HP等で確認してみてください。
[参考]【渋谷公証役場】委任状サンプル集

また、「相手と顔を合わせたくない」、「相手が動向を拒否する」などの場合も、それぞれの弁護士を代理人として立会させることも可能です。(必ず2名は出席が必要)

公正証書作成の手数料について

公正証書の作成には手数料がかかります。この手数料は、全国の公証役場で統一されていますので参考にしてください。

公正証書にて取り扱う支払い金額
  • 100万円まで 5,000円
  • 200万円まで 7,000円
  • 500万円まで 11,000円
  • 1000万円まで 17,000円
  • 3000万円まで 23,000円
  • 5000万円まで 29,000円
  • 1億円まで 43,000円
  • 3億円まで 5000万円ごとに 13,000円加算
  • 10億円まで 5000万円ごとに11,000円加算
  • 10億円超えは5000万円ごとに8,000円加算

まとめ

協議離婚で話し合いによる離婚が成立したとしても、協議で決まった内容を書面化して残すという離婚協議書の作成は重要です。さらにそれを公正証書化することも同じく重要です。

協議離婚の場では約束したけど「状況が変わってしまったから過去の約束は守れない」というのはよくある話しです。実際に子供が成人するまで養育費を貰えたという女性は2割も満たないと言われています。今後も不況の影響、収入格差により慰謝料、養育費の不払いは増えると思われます。

女性にとって離婚という大きな転機において、将来の生活に悪影響を及ぼすことにならないように離婚協議書の作成とそれを公正証書にする手続きはおこなっておきましょう。

このような法的手続きで頼りになるのは弁護士です。弁護士費用が心配な方も離婚協議書の作成サポートなどであれば比較的低料金で依頼することができます。行政書士なども文章作成は対応していますが、アドバイスや代理人としてのサポート業務には対応できませんので、必ず離婚問題に強い弁護士に相談するのが確実な方法です。

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